「スポーツビジネス」の定義とは
スポーツビジネスとは、スポーツに関連する営利活動すべてを含む広い意味を持つ言葉です。スポーツ用品の企画販売、スポーツチームの認知度を高めるイベント、技術を教えて楽しさを伝えるスポーツ教室も含まれます。 したがって、スポーツビジネスは関わる業界業種が多岐にわたります。スポーツイベント一つを考えても、プロスポーツ団体、会場設営、開催場所の周辺施設だけでなく、移動手段としての交通インフラ、イベントの広告・宣伝にいたるまで、多くの業界・業種が関わります。 スポーツビジネスとそれ以外の線引きは、「スポーツが生み出した価値とお金が交換されるかどうか」にあります。たとえば、学校の部活動において必要となる「部費」はビジネスとはいえません。スポーツ自体が価値のあるコンテンツとして消費されるわけではないからです。
スポーツビジネスが盛り上がった背景
スポーツビジネスが盛り上がってきた背景には、オリンピックやサッカーのワールドカップなどの世界的イベントをはじめ、ヨーロッパでのサッカー、アメリカでは野球のメジャーリーグ(MLB)・アメリカンフットボール(NFL)などのプロリーグの人気が世界に広がったことに加え、IT技術の向上があります。 オリンピックでいえば、1984年のロサンゼルス大会以降、商業化が急速に進展しました。その後、放映権料やスポンサー料は上昇し、2005年から2008年にかけて、国際オリンピック委員会(IOC)が得た放映権収入は約2,600億円に達したと報道されています。また、グローバル戦略が成功した国際サッカー連盟(FIFA)も、4年に1度のワールドカップの開催のたびに大きな収益をあげているといわれます。 新型コロナウイルスの感染拡大で、開催形式が大きく変更されたオリンピック「東京2020大会」(開催は2021年)でも、開催に向けたさまざまなサービス開発があり、経済への影響もありました。 こうした地域や企業を巻き込んだスポーツビジネスの隆盛に、テクノロジーの存在は欠かせません。観戦者はさまざまなデータを得ることで試合をより楽しめるようになり、イベントを主催する側は、観戦者のデータを集計することで、効果的な宣伝方法などをプランニングできるようになっています。
日本におけるスポーツビジネスの事例
日本でのスポーツビジネスの事例として、IT企業がサッカーのJリーグに積極的に参入している動きが挙げられます。サイバーエージェントが町田ゼルビア、メルカリが鹿島アントラーズ、ミクシィがFC東京、それぞれの経営権を獲得しています。IT企業の多くは、データに基づくマーケティングやEC事業に強みがあり、メルカリが鹿島アントラーズのECサイトの効率化を推進した事例もあります。 湘南ベルマーレはKPMGコンサルティングとパートナー契約を締結し、データマーケティングに取り組み、スタジアムへの来場を促すとともに、ファンへのエンゲージメント向上に取り組んでいます。 プロ野球にも事例があります。横浜DeNAベイスターズは、試合の名場面などをNFT(非代替性トークン)と呼ばれるデジタルデータに加工して、販売するサービスを展開しています。
スポーツビジネスの発展性と課題
無限大の可能性があるように見えるスポーツビジネスですが、テクノロジーを活用したスポーツ収入源の多様化は、刑法の賭博罪への抵触する可能性も指摘されています。ただ、統一的な見解が出ているわけではないため、ガイドライン制定などを通じて、国が環境を整えることが期待されます。 またチームや選手の成績など、データを法的な権利として保護することも重要な課題です。こうしたデータは、主催者や本人の許可を得ないまま海外に流出し、スポーツ賭博などに使われている現状があります。スポーツビジネスが広がりを見せるなかで、データの保護が今後の焦点となっていくでしょう。 ただ、課題はありながらも、2016年のスポーツ庁試算によれば、2012年には5.5兆円だった国内市場規模が、2025年に15兆円に達すると予想され、市場規模拡大はまだまだ続きそうです。 本記事についての簡単なアンケートにご協力をお願いします。 アンケートはこちら
文:花輪 えみ 編集:東 香名子 掲載日:2022年9月2日