注目BIZワード「データサイエンティスト」 ビジネス推進の鍵を握る人材

データサイエンティスト

IT化が進む現代において、数値データに対する分析力などの素養が、ビジネスの現場でも重宝されるようになってきました。求められるのは、データが分析できることに加え、それを経営者やビジネスを企画する人などが理解できるように説明する表現能力。最近、データをビジネスに生かしていくための鍵となる人材として注目されているのが「データサイエンティスト」と呼ばれる職業の人たちです。

「データサイエンティスト」に必要な3つのスキルとは?

データサイエンティストとは、一般的に、ビジネスの課題などについてデータを分析して、解決策を提示したり、解決に向けた意思決定を手助けしたりするプロフェッショナルです。 一般社団法人「データサイエンティスト協会」は2014年、データサイエンティストに求められるスキルセットとして「ビジネス力(背景を理解してビジネス課題の解決などをする力)」「データサイエンス力(人工知能[AI]、統計学などの情報を理解し使うなどの力)」「データエンジニアリング力(データサイエンスを、意味があり使える形にして、実装・運用できるようにする力)」の3つを挙げました。いずれのスキルも必要なものとされ、課題に応じて発揮すべきスキルを自分で判断できる高度な人材を、データサイエンティストの理想像として掲げています。

日本企業におけるデータサイエンティスト活躍事例

日本の企業でも、データサイエンティストの活躍の場が増えてきました。作業服販売チェーン大手のワークマンは、業務のデジタル化を図り、取引先にデータを開示することで商品の調達量を適正化するなど、業務の効率化が成果を上げています。 また大手ゼネコン・鹿島建設は、AIを用いた図面作成の技術を導入することで、施工計画を作るのにかかる時間を大幅に短縮しました。また、図面をいくつか作成して読み込ませることで、AIが最適な施工計画を提案する技術も導入しています。これにより、通常1週間程度かかる計画が数分で済むようになるなど、効率化と品質向上を両立させています。AIの開発には、データサイエンティストが欠かせません。 データサイエンティストは海外でも活躍しています。アメリカのAmazonやドイツのフォルクスワーゲンをはじめ、海外の一流企業も積極的にデータサイエンティストを雇い、さまざまな課題解決に取り組んでいます。データサイエンティストは業種・業界問わず、活躍が期待されている職業といえます。

今後データサイエンティストは急増する?

アメリカでは、データ関連の職種は、最近10年間で最も採用人数が増えている職業の一つであるとされています。もちろん日本も同様に、中途採用などで人材を確保しようという動きが活発になってきています。 矢野経済研究所の調査によると、データサイエンティストを含む国内のデータ分析関連人材は、2018年度に44,200人だったのが、2020年度には89,800人(見込み)になるとされ、2年間で倍増。さらに2023年度には、141,900人になると予測されています。 2019年に内閣府が発表した「AI戦略 2019」では、2025年までに全ての大学生・高専生が、データサイエンスの初級レベルを習得するという目標を掲げています。また2022年6月には、東京大学が学生を対象にシンポジウムを開催するなどしており、需要だけでなく、若い世代からの関心が高まっている様子も感じられます。 一方で課題もあります。データサイエンティストについては、絶対的な人数が少なく、企業にとっては採用が難しいことに加え、社内で育成するためのノウハウも十分でないことが多い状況です。 また、企業の経営者や現場のメンバーに、データを使って何ができるのか、どのような課題が発見でき、それをどのように解決するのかといったイメージがなく、データサイエンティストが活躍できず、退職するケースもあります。 技術がかつてないスピードで進歩するなかで、データサイエンティストの需要は今後も高まることが予測され、データを用いて、直感では気づきにくい課題の発見や解決ができる企業が、大きく飛躍していくケースは多くなるでしょう。一方、企業にとっては、当面、データの一般的な特性や各種成功事例を理解したうえで、データサイエンティストが活躍できる環境の整備が必要となりそうです。 本記事についての簡単なアンケートにご協力をお願いします。 アンケートはこちら

文:花輪 えみ 編集:東 香名子 掲載日:2022年9月9日