「企業とユーザーの関係性の強化」を狙う
そもそも「コミュニティー」は、利害を共にする「共同体」という意味がありますが、インターネットが広まるなかで、情報交換を目的とした交流やそのネットワークを指す言葉にもなってきました。「マネージャー」は管理する人を意味します。 「コミュニティーマネージャー」は比較的新しい言葉であり、明確な定義がある状況ではありません。企業が「コミュニティーマネージャー」として人材を配置する場合、ユーザー同士の交流、またはサービスや商品を提供する企業とユーザーの交流促進を目的としています。交流を通じて、コミュニティーが形成されて拡大し、企業とユーザーの関係性の強化や、ユーザーのエンゲージメントの強化が期待されます。
発信力の強化や情報収集が期待される
コミュニティーマネージャーには、具体的に「コミュニティーを通じた情報収集とそのフィードバック(企業とユーザーの架け橋)」「コミュニティーの拡大・強化」が期待されます。ブログやSNSを通じた情報発信への反応やコメントを集めるほかに、より潜在的なニーズを聞き取るためのユーザーインタビューなどを実施し、企業側にフィードバックしていくことも必要です。的確、かつタイムリーにユーザーのニーズをくみ取り、反映するよう企業に働きかけることで、サービス向上や事業育成にも貢献しているのです。また、ユーザーと一緒にサービスや商品を作り出していく取り組みをしている企業もあります。 また、「コミュニティーの拡大・強化」としては、発信力の強化が求められることもあります。自身がサービスや企業を代表する形で、インターネット上で情報発信するだけでなく、イベントへの登壇や、取材を受けるなどして、サービス・商品のPRを担うこともあります。また、ユーザーの中から、より自社のサービスや商品に対して愛着を持っている人や関係性が強い人を「アンバサダー」として選び出して、サービスや商品に関する情報発信をしてもらうような仕組み・体制作りを求められることもあります。コミュニティー形成にあたり、オンラインだけでなく、オフラインのイベント開催などをしているケースもあります。 以上のような役割が求められるのが「コミュニティーマネージャー」ですが、言葉自体はまだ浸透しているとはいえません。そもそもユーザーの声の収集や伝達、発信、イベント企画等は、「コミュニティーマネージャー」という言葉が出てくるより前から、マーケティングや広報の部門が担ってきているケースが多いです。そのため、ユーザーとの関係強化を目的とした専門のポジションとして、「コミュニティーマネージャー」が置かれているケースはそこまで多いとはいえない状況です。
今後の浸透は不透明
前述のようにコミュニティーマネージャーに明確な定義はありません。また、現代はSNSなどを通じて、企業とユーザーとのコミュニケーションが容易になり、多くの情報があふれて届けたい情報がうまく届けられるかわからない状況です。コミュニティーやそこに集まるファンが、企業経営のなかで重要性を増してきているのは事実です。インターネットを通じた企業の情報発信は一般的になりましたが、一方通行になりがちです。その情報を受け取った人とより交流を深め、関係性を強化していくことの重要性は、間違いなく存在します。 ただ、コミュニティーの活動、ファン形成などが、短期的な売り上げや利益率の向上とどうつながっているのかを立証するのは大変難しいだけでなく、コミュニティーの形成がユーザーとの関係性強化を目的とする以上、立証しようとすることが不適切なケースもあるでしょう。コミュニティーマネージャーが担う仕事を、昔から存在していた職種が実質的に担当してきたこともあり、ポジションや職種としての「コミュニティーマネージャー」が浸透するかどうかは不透明といえます。 本記事についての簡単なアンケートにご協力をお願いします。 アンケートはこちら
文:花輪 えみ 編集:東 香名子 掲載日:2022年10月19日