強みは導入ハードルの低さ
SaaSはすでに、多くの人が日常的に触れるものとなっています。代表的なものとして、Webメールの「Gmail」、コロナ禍で広まったオンラインコミュニケーションツールの「Zoom」、多くの会社で顧客関係管理(CRM)サービスとして導入されている「Salesforce」などがあります。日本発のものとしてはサイボウズが提供する業務アプリ構築クラウド「kintone」があります。サイボウズは、かつてはパッケージ型の業務アプリケーションを販売しており、SaaSモデルへの事業転換に成功した企業として知られています。 ユーザーにとっての、SaaSの大きな特徴は、従来のパッケージ型のサービスと違って、クラウド上に作られたサービスを、インターネットを通じて利用できる点にあります。また、SaaSは一般的にユーザーに対して、同じサービスを提供するため、比較的安価で、かつ利用期間の縛りがなく自由に導入できる特徴もあります。サービス提供者側が、随時アップデートをするために、買い替えをせずに最新の機能を利用できることも、SaaSならではです。 ベンダー(サービスを提供する企業側)のメリットも複数あります。比較的安価で、使用期間も自由がきくことから、ユーザーの導入ハードルが下がり、新たな顧客を獲得しやすいことがあげられます。また、月ごと、年ごとに各ユーザーが払う金額は、売り切り型のサービスと比べて安価になるものの、売り上げの予測が立てやすく、長期的には売り切り型のサービスより事業の収益性が安定するなどのメリットがあるとされています。 一方、急激な拡大と競争の激化を背景として、ユーザーの長期利用を狙って、カスタマイズした機能を提供するSaaSも出てきています。Salesforceは今年、豊富な経験やデータを生かして、日本の中小企業向けのプランの提供を始めました。
リモートワークが拡大を後押し
SaaSが急拡大した主な理由として、クラウド上でサービスを利用できるので、ユーザー側のセキュリティ対策やメンテナンスの必要がほぼないことがあげられます。 また、新型コロナウイルスの感染拡大を背景としたリモートワークの広がりも、SaaSの利用拡大に寄与したといえるでしょう。SaaSであれば場所や時間を問わず、リアルタイムで情報共有や共同作業ができます。
SaaS株価急落、今後どうなる
世界でも日本国内でも、SaaSの市場規模は拡大しつづけています。富士キメラ総研が行ったソフトウエア(パッケージ・SaaS)国内市場を調査したレポートによると、2024年度の市場規模は約1兆1,200億円と予測されています。 ただ、コロナの影響でバブル化したSaaS関連企業の株価については2022年に、最高値から半分以下になる企業もありました。SaaSのビジネスモデルは、単価の安さやサービス提供開始時のユーザーの少なさから、最初の時期は投資が先行し、収益化が遅れがちです。株価の下落は、収益化がうまくいっている企業の少なさが影響したというのが一つの見方となっています。 本記事についての簡単なアンケートにご協力をお願いします。 アンケートはこちら
文:花輪 えみ 編集:東 香名子 掲載日:2022年9月30日