注目BIZワード「サバティカル休暇」 社員の自己研鑽を支える長期休暇

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リモートワークの普及や副業の承認など、ビジネスパーソンの「働き方」もここ数年で様変わりしました。そうしたなか、「休み方」にも変化が起きています。長期間、職場を離れてやりたいことに時間を使える「サバティカル休暇」。いったいどんな制度なのか、解説します。

サバティカル休暇とは?

サバティカル休暇は企業において、理由を限定せずに与えられる一定期間の長期休暇のことです。もとになっているのは英語の「sabbatical」で、「長期有給休暇」「長期充電休暇」「特別研究期間」などと訳します。これは「安息日」を意味するラテン語の「sabbaticus(サバティクス)」に由来しています。 サバティカル休暇は理由を問わず数カ月以上の長い休みが取れるのが特徴です。企業によって条件が異なりますが、海外では1年以上にわたる長期の休暇が取得できるケースも多く見られます。 制度としてのサバティカル休暇はヨーロッパが起源です。1990年代頃から「ワーク・ライフ・バランス」の考え方が広まり、仕事だけでなく家族との時間や自分自身の生活も大切にする価値観が生まれ、人材の流出を防ぎたい企業の労務制度として取り入れられました。今ではフランス、スウェーデン、フィンランドのように政府が積極的に導入を促している国もあります。スウェーデンでは、手当ありで最長1年間の休暇を取得できます。サバティカル休暇を取得している社員がいる間は、代替要員を採用する決まりとなっており、失業対策にもなっています。 日本でも、近年「働き方改革」が叫ばれるようになり、従来のように「仕事のために私生活を犠牲にする」という考えは古くなりつつあります。こうした流れを受けて、サバティカル休暇を導入する企業が増えてきました。サバティカル休暇は法律で定められた制度ではなく、有給か無給かの判断は企業に任されています。本来は取得目的が制限されないのが特徴ですが、目的に応じて給料の支給の有無を取り決めることもできます。特に、「リカレント教育(学び直し)」に注目が集まるなか、留学や大学院進学、研究機関での勉強を目的とする場合は補助金を支給するといった運用が増えています。

導入のメリット

サバティカル休暇を導入することで、企業にとってはワーク・ライフ・バランスを重視しているという印象を内外に与え、イメージアップにつなげられるメリットがあります。 社員にとっては、短期の休暇では難しい経験をし、自己成長につなげられる点がメリットです。日頃は仕事に追われてなかなか手を付けられなかった学習にも時間を割くことができ、社員の専門性向上やキャリアアップが実現できます。 向学心の高い優秀な社員が留学や大学院進学のために退職してしまうような企業の場合、サバティカル休暇の導入によって人材に在籍し続けてもらうことが期待できます。さらにそうした社員に長い休暇で心身ともにリフレッシュしてもらい、自分の新たな可能性や価値観を見つけたり、仕事から離れることで今までにない新しいアイデアが生まれたりと、生産性の向上につながる制度として期待が寄せられているのです。

日本での導入事例

日本でサバティカル休暇の先駆けといえるのはヤフーです。2013年に「サバティカル制度」として導入し、10年以上勤続する社員を対象に2~3カ月の休暇を取れるようにしました。休暇中は支援金として基準給与1カ月分を支給します。また、リクルートテクノロジーズ(現:リクルート)が導入した「STEP休暇」は条件を満たした社員を対象に、勤続3年ごとに最大連続で28日間の休暇を取れる制度で、取得目的の制限なく、一律30万円が支給されるというものです。 ただ、日本では海外ほどの広がりを見せていないのが実情です。日本には「必要以上の休暇を取得することは怠慢だ」という風潮が根強く残る企業がまだまだあります。そういった企業では、いくら制度を整えても「取得したら人事評価が下がるのではないか」「今後の出世に響くのではないか」など、上司や同僚の目を気にして取得できないということになりかねません。また、実際に取得者がいた場合、社員の間で理解が浸透していないと不公平感や不満が生まれ、人間関係の悪化につながるでしょう。こうした課題が制度普及の障壁となっています。 サバティカル休暇制度を効果的に運用するには、取得しやすいように制度設計をしたうえで、休暇を取りやすい雰囲気づくりをすることが重要です。社員にサバティカル休暇の導入の狙いをしっかりと伝え、企業と社員の双方にとってメリットのある制度として推奨していくことで、理解が深まっていくでしょう。さまざまな理由で活用できるサバティカル休暇は、介護離職などの社会問題の解決にもつながる可能性があり、官民をあげての取り組みが期待されています。 本記事についての簡単なアンケートにご協力をお願いします。 アンケートはこちら

掲載日:2022年10月28日