中途入社者も高い 3年以内離職率
コロナ禍でいったん下がった有効求人倍率は回復傾向にあり、人材の獲得競争は厳しさを増しています。求人広告や人材紹介などにかかる費用だけでなく、採用イベントやインターンシップの受け入れ対応などにもコストや手間がかかり、企業にとっては「年々採用コストが高まっているが、なかなか採用ができない」という状況になっています。 採用コストやその負担感が高まるなか、採用した人材が短期間で退職してしまうのは、企業にとって大きなマイナスですが、中途入社者、新卒入社者ともに離職率は低くないのが現実です。厚生労働省が実施した「新規学卒者の離職状況」の調査によれば、大卒者の3年以内離職率は2010年の卒業者以降、30%を超える状況が続いています。また、少し古いですが2014年の中小企業庁の調査によると、中小企業の中途入社者の3年目までの離職率は、30%程度となっています。
早期に仕事や職場に「満足」してもらうために
採用の難しさや、採用コストの負担感を解消する方法の一つとして、オンボーディングがあります。オンボーディングとは、本来、飛行機や船に乗った人をサポートすることをいいます。飛行機に乗ると、シートベルト着用、禁止事項、非常時の対応方法などのアナウンスがあるのは、おなじみの光景でしょう。オンボーディングは、乗客の安全・安心を目的としています。 近年、企業で使われる「オンボーディング」の意味合いも、乗り物関連のものから派生しています。具体的には、新卒採用や中途採用の方も含めて入社した社員が、企業の理念や経営方針を理解し、職場や仕事に満足した状態となることを目指します。企業には、新しいメンバーのために、教育体制や上司のサポートが受けやすい環境を整備して、新しいメンバーの幸福感(ウェルビーイング)や、企業への愛着心(エンゲージメント)を向上させる工夫が求められます。 オンボーディングの効果は早期退職の防止だけではありません。中途入社・新卒入社関係なく、新しいメンバーがより早いタイミングで、会社に貢献するように戦力化し、チームや組織全体の生産性を高めることにもつながります。 新しいメンバーに合った育成方針を考え、目の前の業務に必要なスキル以外の情報も共有することなどを含めて視野に入れるとよいでしょう。社内でのキャリアアップ事例など「この会社で頑張ればこうした人材になれる」という見通しは、退職の防止だけでなく、業務に対するモチベーションアップにもつながります。 スキル面だけでなく、人間関係にも配慮が必要です。従来の人間関係の悩みに加え、コロナ禍以降リモートワークが一般的になったことで、新たな問題が発生しています。ある報道によると、業務に不慣れなメンバーは「放置され気味である」と感じて、転職を検討するケースが出てきているそうです。リモートワーク時代に合った形での、メンバー意識の醸成、仕事への満足度を高めるような新しいオンボーディングのあり方を模索する必要がありそうです。 本記事についての簡単なアンケートにご協力をお願いします。 アンケートはこちら
文:嶺 竜一 掲載日:2022年11月18日