コロナ禍にグローバル企業で拡大
海外メディアによると、バーチャルアサインメントの仕組みは海外転勤に伴うコストや従業員の負担軽減などを目的に、2000年代初頭に導入が始まったとされています。2020年には各国政府がコロナ禍による渡航制限を相次ぎ実施したため、従業員を外国に移動させられなくなったグローバル企業を中心に導入が加速しました。ITシステムの発達やデジタル環境に慣れているZ世代の従業員が増えていることも制度の導入を後押ししています。 こうした仕組みを取り入れることで、企業にとっては駐在員の派遣や外国での拠点開設・維持にかかるコストを抑えられます。従来は就労ビザの取得が難しかったり、アクセスしにくかったりした国でも事業を始めやすくなるメリットもあります。社員にとっても、海外に移住することなくグローバルな経験が得られるほか、母国での家族との生活環境を維持しながら新たな役職に就けるようになります。 英コンサルタント会社「ECAインターナショナル」が2021年に公表した調査によると、コロナ禍前にバーチャルアサインメントに関する方針を定めていた企業は調査対象の5%にとどまりましたが、コロナ後は40%超となりました。導入の主な理由として、従業員や拠点を海外に移す前に先行して業務を始められること、従業員が海外で業務を続けながら母国を離れていられることなどが挙げられました。導入企業の約6割がパンデミック収束後も続けると答えています。
各国の法制度や税制に対応が必要
日本ではコロナ禍を機に国内でのリモートワークは普及してきましたが、国境を越えた遠隔勤務の例は多くありません。海外企業に比べ遅れていましたが、追随する動きも出てきました。国内報道によると、三菱電機は2023年度、バーチャルアサインメント制度を導入します。本社の人事施策などに関わるチームに海外人材を起用することを想定しているとのことです。若手や中堅社員に現地法人の業務を経験させるなど育成目的での活用も想定しているようです。 バーチャルアサインメントを導入するうえで、従来のリモートワークと異なる課題もあります。国境をまたいで業務に従事するため、雇用に関する法制度や企業・社員の納税に対し、どの国のルールが適用されるのか検討する必要があります。社内でも国内と海外法人のどちらの給与体系を適用するかを定めなければなりません。時差の大きい国との間で日々業務にあたることで、従業員の長時間勤務や不規則生活を招く恐れもあります。 こうした課題を商機とし、コンサルタント会社などはバーチャルアサインメントの対象となる従業員の給与計算や送金、税金・社会保障費の支払いを支援する動きも出ています。導入企業に代わり雇用契約を結ぶサービスもあります。就労するうえで働き方の柔軟さややりがいが企業を選ぶ決め手にもなっており、人材競争の激しいグローバル企業を中心に国内でも導入する動きが広がりそうです。 本記事についての簡単なアンケートにご協力をお願いします。 アンケートはこちら
掲載日:2023年5月25日