転職等希望者「1,000万人時代」 2022年、約8%の大幅増

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転職など、現在の業務以外の仕事をしたいと希望する人の数が増え続けています。このほど公表された総務省の2022年の労働力調査(詳細集計)では、「転職等希望者数」が年平均で968万人となりました。統計上、比較可能な範囲で900万人を超えるのは初めてです。増加が目立つのは35~54歳の男性ミドル層ですが、その一方、実際の転職者数は希望者数ほどの伸びは示していません。1,000万人という節目の数を目前にした政府統計から、何が読み取れるでしょうか。

45~54歳男性の希望者数は4年で1.5倍

労働力調査では、「現在の仕事を辞めてほかの仕事に変わりたい」または「現在の仕事のほかに別の仕事もしたい」と希望している人を「転職等希望者数」として集計しています。 2022年平均の転職等希望者数は、前年から71万人増え、968万人となりました。伸び率は約8%で、増加を続けてきた近年の中でも特に高い伸びとなっています。805万人だった2013年平均と比べると、160万人以上増えたことになります。 人数ベースでの伸びが特に大きいのは、35~54歳の男性です。35~44歳の男性の転職等希望者数は120万人で、2021年平均から12万人増えました。同様に、45~54歳の男性は110万人と16万人増えています。45~54歳の男性の希望者数は2018年平均が74万人だったので、ほぼ1.5倍に増えたことになります。

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女性の転職等希望者数も増えています。女性の場合は25~34歳の増加人数が最も多く10万人増の118万人。続いて、45~54歳と55歳以上がそれぞれ9万人増えました。 転職等希望者数は、増加を続けてきました。特に近年は、コロナ禍をきっかけに働き方や人生を見つめなおす人が増えたといわれています。事業が打撃を受け転職を余儀なくされたケースだけでなく、リモートワークの普及や企業の副業解禁といった動きが相次ぎ「今勤めている企業以外での仕事」に関心を寄せる人が増えていることがうかがえます。

実際の転職者数は増えるも、伸びは小さく

ただ、実際の転職者数をみると異なる動きをしています。 転職者数は2019年まで増加傾向を続けてきましたが、コロナ禍を受けて2020年、2021年は連続で減少。2022年は303万人と前年比で4%の増加に転じましたが、直近のピークだった2019年の353万人と比べると50万人少ない水準です。 転職者数で大きく増えたのは25~34歳の男性で、2022年は前年比6万人増の36万人でした。そのほかは女性が多くの年代で増加し、全体を押し上げた形となっています。

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総合すると、転職に関心を持つ層は増えているが、何らかの理由によって実際には転職に至っていない実情がうかがえます。特に、希望者数の伸びが大きい男性ミドル層にそうした傾向がみられそうです。 同調査の「転職等希望者数」には転職だけでなく副業などに対する関心も含まれるため、慎重な検討は必要です。ただ多様な働き方や、今とは異なるキャリア上の選択肢を求める個人が増えていることは確かといえます。

「受け皿」の重要性高まる

岸田文雄首相は2022年10月、労働移動の円滑化を図るための指針を2023年6月までに取りまとめることを表明しました。「人への投資」として、個人のリスキリング(学びなおし)に5年間で1兆円を投じる方針も示しています。 生産年齢人口が減少する中で、ミドル以上の年齢層に長く活躍し続けてもらうことは日本社会の課題の一つです。「新しいキャリアの選択肢」を求める人材に対して、適切な受け皿を用意する重要性が高まっています。 本記事についての簡単なアンケートにご協力をお願いします。 アンケートはこちら

文:中川 雅之 掲載:2023年3月2日