すぐ辞めた人座談会2 「ジョブホッパーはよくない?」 在職期間で評価できるか

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入社時の思いと裏腹に、比較的短期で離職して再転職をする方がいます。転職を繰り返すことをネガティブに捉える見方もあるなかで、どんな背景や思いで短期での転職をしたのでしょうか。匿名で本音を伺う座談会の後編です。 ※写真はイメージ。一部、個別に実施した聞き取りをもとに構成しています。

前編はこちら

座談会参加者 Aさん 28歳男性。2社目の不動産関連会社を1カ月で退職。 Bさん 34歳女性。4社目のベンチャー企業を3カ月で退職。 Cさん 33歳男性。3社目のベンチャー企業を半年未満で退職。 Dさん 50代男性。3社目の流通大手を2年で退職。

短期転職がネガティブかは理由次第

短期での離職・転職を経て、キャリアや転職について考えが変わった点はありますか。

B(敬称略、以下同じ) 数カ月で辞めてしまった際の学びは、自分を大きく見せようとしないということかと思います。実際、今の職場に入るときは「資料作成は苦手で、自分でもあまりセンスないと思います」とか、苦手としていることも正直に伝えるようにしました。一方で、強みのアピールもしっかりとして、会社側にも職場の雰囲気や業務の進め方について質問をする意識も強まりました。転職をするたび、面接などでのチェック項目が増えていっている感覚ですね。

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C 私も企業カルチャーについてはしつこく確認するようになりましたね。今の職場にはリファーラル(知人の紹介)で移ったのでその時点で一定の信頼はありましたが、前職での経験から人事の担当の方には、社内のマネジメント手法や意思決定の流れなど、かなり細かく質問をしました。 A 少しずれてしまうかもしれませんが、やはり実績は大事だということも感じました。私の場合、今の職場に移れたのは新卒で入ったブライダル企業に5年勤め、一定の成果を出していたからだと思います。 先ほどDさんがおっしゃった「理由があれば、短期での転職も問題になりにくい」ということ(※前編参照)も実感していますが、問題にはならなくても、採用してもらうためには別に「雇う理由」が必要になりますよね。なので、当たり前かもしれませんが、転職先でしっかりと働いて実績を積むことが大事だと思って仕事に向き合っています。

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B 転職のときって、つい報酬や業務内容など求人情報に記載しやすい数値や条件に目がいきがちだと思います。でもその会社がどんな価値観を大事にしていて、社会や従業員、ステークホルダーにどう向き合おうとしているのかは大事ですよね。そしてきれいな言葉を並べているだけでなく、それがどの程度組織に浸透しているかも大事。 A 分かります。一緒に働く人がどんな人かは本当に大事ですよね。それによって精神の安定度が変わってくるし、メンタル次第で仕事のパフォーマンスも変わると思います。

「転職回数だけで判断するのはナンセンス」

日本では、転職を繰り返すことをあまりよく思わない価値観が強いともいわれます。この見方について、どのようにお感じですか。

D 個人にはそれぞれの人生があるわけで、個人は「何かしらの理由」で企業や職場を選んでいるわけです。理由は賃金でも職場環境でもなんでもよくて、人それぞれです。また、同じ人でも、年齢や家庭環境で「何を大事にするか」という基準は変わります。会社中心ではなく、自分が主体的にキャリア形成していくという点においては、転職の回数や在職期間だけで何かを判断するのは無理があるのではと思います。

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C 私自身はあまり気にしないのですが、もともといた新聞社の人たちに直近の転職のことを伝えるとネガティブな意味での「ジョブホッパー」のような見られ方をしてびっくりしました。10年で4社目は少なくはないとは思いますが、個人的にはむしろ、転職して多様なスキルを積まないと「ジョブ型雇用」時代には不利になると思っています。それがジョブ型について取り上げることがある新聞の人でもネガティブに思う人がいることを知って、人によって大きく感覚が違うことを改めて感じさせられました。 B 私は職場とのミスマッチと妊娠出産が重なりましたが、ミスマッチがなくても、妊娠出産はキャリアの大きな転機です。これは友人の話ですが、社内に「育休産休を取った人は、会社のお荷物になったという意識を持ってください」と言う上司がいるらしいんです。「それだけで会社を辞める理由になるよね」と話していましたが、そんなこともあると考えれば、転職回数だけで何かを判断するのは本当にナンセンスかなと。 でも転職が増え、多様な働き方が徐々に広がってきたことで、企業側の受け止め方も変わってきている印象はあります。

「信頼でつながったネットワーク構築を」

納得いくキャリアを歩むために、大事だと思うことがあれば教えてください。

D 信頼でつながったネットワーク、人脈ですね。短い期間にどれだけ転職を繰り返している人材でも、信頼できる人からの紹介があれば雇用を検討しない企業はないでしょう。今はさまざまなSNSがあり、どこでどんな人とつながり、どんな仕事をしていたのか可視化されています。信頼のおけるネットワークがあれば、年齢を重ねていても仕事を見つけられると思いますし、逆に信頼を損なうような仕事をしていれば、どれだけ取り繕おうとしても分かってしまうように思います。 B すごく共感します。今の会社では人事の仕事もしていますが、面接ではやはり話すのが上手な方とそうでない方で、その場の印象は大きく変わってしまいます。でもその印象がスキルの全てではないわけです。例えば話し慣れている営業職の方などはアピールがうまい傾向がありますが、内勤や開発職の方は口下手な方が多いイメージです。でも営業職の方がみんな開発職より優秀なんてことは絶対ないわけです。 個人目線では、自分のスキルや強みをうまくアピールする力は必要だと思うのですが、逆の見方をすると、採用側の「見抜く力」も、ミスマッチを防ぐ意味で大事だなと思います。結論としては、やはりお互いが正直に現状や希望を伝え合うのが重要かなと。

C 直近の転職で、短期で辞めた理由を「いかにうまくごまかすか」考えていたので、ちょっと耳が痛いですね(笑)。私の場合、単に合わなかったと言うと印象がよくないかと思って、説明としては過度なマイクロマネジメントで会社を信頼できなくなった」といった話に仕立てていました。 キャリアに対する私の考え方としては単純で、「楽しそう」と思えることをやり続ければ、本人にとってはいいキャリアが自然と築けるのではないかと思います。他人から見たらどうかは分かりませんが、自分が納得できるか、という基準ではそれが一番ではないでしょうか。

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A 皆さんに比べると個人の体験からの感想のような話なのですが、「今我慢してもいずれ辞めるだろう」と感じる状況に長くしがみつく必要はないと思います。我慢してでも成し遂げたい何かがあるなら別ですが、そうでないなら我慢する時間は人生の無駄だと思います。環境を変えることにストレスが伴うことも事実ですが、早く決断すれば目の前の「我慢を続けなくてはいけない時間」を短くできることは確かなわけですから。 大した理由がないとか、自分に非があるなどの状況でないならば、事業と同じで「損切り」は早くするほうが長期的にはいいのではないでしょうか。 C 分かるなあ。前職を辞めるとき、何人もの同僚から「早く辞めて正解ですよ」とささやかれました。これも自分が辞めた理由の一つですが、職場にあまり楽しそうに仕事をしている人が多くなかったんですよね。「みんな辞めたいと思っているのに我慢しているのかな」と思いました。それぞれ事情はあると思いますが、別の選択肢を持てるかどうかは、非常に大きいですよね。

本日はありがとうございました。

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写真:今村 拓馬