座談会参加者(本文中は、敬称略) Aさん:女性。ヘッドハンターとしての信念は「候補者、企業の可能性を広げる」 Bさん:男性。ヘッドハンターとしての信念は「企業・候補者に寄り添う提案を行う」 Cさん:女性。ヘッドハンターとしての信念は「クライアントの可能性を広げられるような提案を行う」 Dさん:男性。ヘッドハンターとしての信念は「その人・その企業以上に、ポテンシャルを信じぬく」
ベンチャーもジョブホッパーは敬遠傾向
四人とも同じ会社の所属と聞いています。御社はどのような求人案件を扱う会社なのでしょうか。
A 会社としては、ベンチャー企業(スタートアップ企業)のハイクラス人材に強みがあり、基本的にはマネージャー以上の方にお声がけしています。資金調達のフェーズでいいますと「シリーズB(事業が軌道に乗り始めて資金調達してさらに拡大していく段階)」と「シリーズC(株式上場が見えているフェーズ)」の2つに強みがあります。
求職者に声をかける場合、データベースでどのような点を見ているのでしょうか。
B 経験社数がひとつの基準になります。ベンチャー企業だと、スピードが速くて、カオスな状況も多いので、いわゆる「ジョブホッパー」の方だと定着しにくい傾向があります。たとえば、30代前半で5社以上経験していると、多い印象です。目安としては3社以下なら、それほど気にならない、といった感じでしょうか。企業からは「価値観や考え方が固まっておらず、そこから新しい企業のカルチャーに合わせていくのが難しくない方」が好まれる印象があります。 A そうですね。1社あたりの在籍年数でいうと、2年以上は在籍していてほしい感じです。 B とはいえ、在籍年数は職種にもよる部分があります。営業やマーケティングのようなビジネス職ならば2年は在籍していてほしいということはあります。ただ、エンジニアのような転職回数が多い傾向にある職種の場合は、在籍期間が短くてもマイナスの印象はあまりありません。また、ビジネス職であっても、転職前の直近の企業に長く、目安でいうと2、3年在籍している方は、そこまで懸念されないと思います。逆に、社会人として最初に入社した企業に長く在籍していても、直近で複数の企業に在籍し、それぞれの在籍期間が短いと、「何かあったのだろうか」と気にする企業は多いです。会社都合で転職や転籍をするケースもあり、一概にはいえませんが、在籍期間の短さが懸念材料になる傾向はあります。 A 面談して初めて直近で複数企業に在籍していて、それぞれの在籍期間が短かったことがわかる人もいます。できる限りきちんと職歴をデータベースに登録しておいてほしいと思うことはあります。 C 職務経歴書についていえば、全員がすべてを記載しているわけではなく、直近の職歴だけを書いている方もいます。たとえば、20年以上キャリアがあるなかで、直近の3年分しか記載がない人もいます。社会人経験が長いのに、記載されている職歴の情報が少ない方に声をかけるかどうかは、年収と職務内容によりますね。
長く在籍していることが、消極的な材料になるケースはありますか。
C ただ長く在籍していればいいというわけではなくて、大手企業1社にずっと在籍している方にはあまりお声がけしません。 A 30代から40代で経験社数が1社のみの場合、10年以上は勤めていることになります。その場合、「在籍企業の文化に影響されて、固定観念がある」という見方をされることが多いという印象です。

相対的に年収が高ければ「優秀」
候補者が優秀かどうかは、どう見極めるのでしょうか。
D 相対的に見ます。たとえば同じ業界の営業の方で、年間の売り上げが20億円の方と5,000万円の方がいたら、前者が優秀だと判断します。ただ、顧客単価の低い業界で、年間の売り上げが5,000万円の方がいたとして、他にそのような売り上げを上げている人がいなければ、「営業力が高い」と判断することもあります。 また、年収は、在籍している企業からの評価のひとつの指標になります。私は、年収の高低を判断するのに、候補者が所属している企業の公開情報をよく見ます。その企業の平均年収が大体わかりますので、相対的に年収が高ければ「優秀な人材」というふうに判断します。 営業などの職種は数字から能力を測定しやすいですが、新規事業の立ち上げや企画職の場合は年収や経歴からの判断はしづらく、面談前の時点では優秀かどうかはほぼわかりません。そのため一度面談をして、話し方やどこまで事業を俯瞰しているかといった要素を見て考えることとなります。
案件の良しあし 求人内容だけでは判断できず
求人内容(職務記述書:求める人材の職務内容を記述した書類)から、良い案件、悪い案件は判断できるものでしょうか。
C 正直、求人内容を見ただけではわからないです。 D 悪い案件は、内容よりも、募集期間からわかる部分もある気がしますね。長期間掲載されている案件や、(募集開始時期を更新するため)再掲載を繰り返しているような案件は、よくない場合が多いです。個人的には、社内カルチャーについて「アットホーム」と書いてある案件も、なぜか印象がよくありません。 第2回に続きます 本記事についての簡単なアンケートにご協力をお願いします。 アンケートはこちら
文:鈴木 工 掲載日:2022年10月31日