ゲーム業界の転職市場は引き続き好調
西田さんはエンターテインメント業界でもゲーム業界が専門だと伺いました。
新卒から人材紹介を続けており、ゲーム関連には15年ほど携わっています。現在もゲームの案件が一番多くて8割、新しい分野としてマンガが1.5割、VR・ARが0.5割といった構成です。 ゲーム業界は専門性が高く、業界内で人材が回遊する傾向が強いです。一時はソーシャルゲームの盛り上がりで市場自体が大きくなっていましたが、直近では、市場は飽和状態にあり、転職市場としては買い手市場が続いています。 新しい動きとしては、近年デジタル化が進んでいるマンガ領域でゲーム業界の方の採用が活発で、私が転職をご支援した方も今年1月だけで複数名いらっしゃいました。

近年の、ゲーム業界人材の流れを教えてください。
2009年ごろからはケータイ・スマホ向けのソーシャルゲームが盛り上がって、家庭用コンシューマー向けのゲームメーカーからソーシャルゲームを開発するIT系企業への転職が増えました。 ただ、2015年以降はソーシャルゲームのブームが落ち着き、コンシューマー向けも含めて売り上げが見込めるヒット作品のIP(キャラクターなどの知的財産)の続編や関連するソフト開発、大規模なマーケティング投資をした、売り上げが見込めるソフトを持っている企業への人材の集約が進んでいます。それに伴い、比較的簡易なゲームを開発していたソーシャルゲームメーカーから、複雑性の高いソフト開発を行うコンシューマー向けゲームメーカーへの転職も増えてきました。
求人の条件はいかがでしょうか。
ソーシャルゲームが盛り上がっていたころに、IT系企業が人材を獲得しようと市場よりも高い年収を提示したことで、全体的に給与水準は上がりました。とはいえ、コンシューマー向けのゲームメーカーは年功序列の傾向が強く、比較をすると、現在もソーシャルゲームメーカーのほうが、若手の方でも役職によっては条件が良いケースが多いです。ただし、コンシューマー向けゲームメーカーの場合、比較的業績が安定していることから中長期的な総所得だとソーシャルゲームメーカーを上回るケースがあるため、転職を検討する場合には企業ごとの給与制度を確認することをおすすめします。
求められるのはプロダクトマネージャーとデータサイエンティスト
近年、ゲーム業界ではどのような人材が求められているのでしょうか。
職種を問わず「リーダーシップ」を持った人材が求められています。リモートワーク中心の企業が多く、これまで以上に自発的に動ける主体性の高い人材を求める傾向にあるためです。 ゲームソフトの開発に直接関わる部分では、同じ業界からの採用がほとんどですが、プロダクトマネージャーやマーケティングの担当などはIT業界や広告業界をはじめとした他業界からの採用も増えています。ゲームソフトの開発も、「200~300人が関わる大型のプロジェクト」という点ではIT業界のシステム開発プロジェクトと共通している部分が多く、相性が良いケースが多いです。 ソーシャルゲームの場合は、ユーザーのアクセスや課金の状況などを分析し、それを運営や開発に反映していく必要があるので、データサイエンティストも多くの企業が採用しています。ほかにもサーバーエンジニアの募集が継続してあります。

グラフィックの高度化が転職市場に与える影響
どのような経験があると企業にとって魅力的に映るのでしょうか。
ここ2~3年で起こっているのは、グラフィックの高度化です。そのため、過去にヒットしたコンシューマー向けゲームで複雑な仕様設計を担当していた方や、高度なCGを担当していた方、3Dデザイナー、グラフィック部分のプログラマーなどが求められています。これは発売元の大手コンシューマー向けゲームメーカー出身の人材だけでなく、その2次請け、3次請けの企業で開発に関わっていた人材についてもニーズがあります。「どの企業にいたか」よりも、「どのようなコンテンツに関わり、どのような技術を持っているか」が評価されています。 そのほかで注目しているのが「ファンマーケティング」の担当者です。既存ユーザーの「ロイヤル化」を目的としたオフライン・オンラインイベントの企画、アニメ化やグッズ化などの展開、SNS運用に特化したポジションです。ゲーム開発だけではなく、ゲーム周辺のビジネス開拓職が求められているといえます。
ソーシャルゲームメーカーへの転職は好条件が多い
ゲーム業界は仕事がハードなイメージがあるのですが、いかがでしょうか。
近年は大きく改善されています。ソーシャルゲームメーカーは、以前はかなりハードな働き方をしているケースもあったのですが、時間がたつにつれて適切なマネジメントの形が整ってきているように感じます。 ゲームソフトのリリース間近が最も忙しいコンシューマー向けゲームメーカーと異なり、ソーシャルゲームメーカーはリリース後もアップデートを繰り返すので、忙しさの明確なピークがありません。ですから、スタッフのモチベーションを保つためにピークを均一化することを心がけているメーカーが多くなってきていますね。

本記事についての簡単なアンケートにご協力をお願いします。 アンケートはこちら
構成:吉田 洋平 写真:研壁 秀俊