転職市場NOW エネルギー編 「求人はほぼクリーンエネルギー関連」

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トップヘッドハンターに転職市場の最新動向を解説してもらう本連載。今回はエネルギー業界や、プラントに関連した転職の状況についてアジェンテの福地桂佑マネージャーに話を聞きました。

福地 桂佑

(ふくち けいすけ)

アジェンテ人材紹介事業部マネージャー。主に、エネルギー、プラントなど人々の生活に欠かせないインフラ、重厚長大産業においてものづくりに関連する領域を担当。小規模ながら、ある日本有数の業界トップクラスメーカーにおいては紹介に対する内定率が1位となるなど、企業からの信頼も厚い。

業界をあげて「クリーンエネルギー」を推進

担当分野について教えてください。

主に扱っている領域は2つあります。1つめがエネルギー業界で、幅広い職種を扱っています。2つめは、プラントに関連した職種となります。プラントを所有している企業はエネルギー業界以外にも、化学メーカー、医薬品メーカーなど多岐にわたっています。どちらの領域においても、技術職に強みがあります。

エネルギー業界には、どのような種類の企業があるのでしょうか。

大きく分けて、電力会社、ガス会社、石油会社があります。

エネルギー業界の近年の動向について教えてください。

エネルギー業界は、近年大きく変化しています。電力の自由化以前は、成熟したマーケットの中でパイをどう奪い合うかという具合だったのですが、近年は、脱炭素化やSDGsといった動きの本格化により、業界として、既存エネルギーから「クリーンエネルギー」への転換に取り組んでいます。具体的には、太陽光や風力、地熱、バイオマス、水素などさまざまな発電方法の研究が進められていますし、発電した電気をためる蓄電池や、「VPP(Virtual Power Plant)」と呼ばれる小規模な発電施設や蓄電施設を、仮想的に一元化して管理する技術も注目されています。 既存のエネルギープラントにおいても、技術革新が進んでいます。排出するCO2を地中に閉じ込めたり、排水処理をより高レベルで行ったりするなど、環境負荷を軽減するためのさまざまな仕組みが取り入れられるようになっています。

業界として、クリーンエネルギーへの転換に取り組んでいるとのことですが、エネルギー業界にはどのような種類の企業があるのでしょうか。

まずは、石油や天然ガスなどの化石エネルギーによる大規模発電を中心としてきた、従来の大手エネルギー会社です。鉄道事業会社や全国にコンビニエンスストアを展開する企業が、太陽光などのプラントを持つようになっています。他にも、クリーンエネルギーによる発電を専門にしているベンチャー企業も多くなってきています。ベンチャー企業は100人から200人程度の規模ですが、太陽光・風力・バイオマス・水力など再生可能エネルギーを中心にそれぞれの発電プラントを所有しています。

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求人の多い「技術者」と「電源開発」

求人の状況について教えてください。

業界の流れを受けて、求人はほぼクリーンエネルギーに関連したものとなっています。会社の規模と関係なく、プラントを持つ企業についていえば、2つの職種で多くの求人があります。まずは「技術者」です。具体的には、プラントの低炭素化を進めるために必要な技術者や、VPP関連の技術者などです。電機メーカーでVPPの研究をされていた50代後半の方が、大手エネルギー会社へ転職したケースもありました。 2つめは、「電源開発」と呼ばれる職種の求人があります。新しいプラントを作る場合、国内外に拠点を設けるケースが多くあります。その際に、政府や自治体と交渉したり、土地を取得したり、近隣住民と折衝したりするといったことが必要になります。こうした電源開発の人材としては、同じ業界の経験者を採用する以外に、不動産業界の方を採用するケースがあります。電源開発の業務内容が、不動産業界の都市開発と重なる部分が多いためです。

転職回数は重視されますか。

以前より緩和されてきましたが旧来の大手エネルギー企業ですと、40代半ばで3回くらいまでなら許容されます。会社の規模が小さくなると許容範囲が広がり、ベンチャー企業の場合は、重視しない会社が多いです。風力発電など経験者が少ない領域においては、どこの会社も転職回数はまず気にしません。

転職した場合、待遇はどのように変わりますか。

エネルギー業界内で転職する場合、「給与が上がることを前提に転職する」という方が多く、結果としてより大きな企業に移り、給与が少し増えるという方が多いです。給与が大きく上がらないのは、外資系企業が少なく日本企業が多い業界であるためです。日本企業の場合、給与水準が決まっていて交渉の余地がないケースが多いです。 一方で、「クリーンエネルギーに関わって世の中の役に立ちたい」と考え、やりがいを重視した転職を志す方も一定数おり、そういった方の場合は、給与が下がってもご自身で設定された条件を満たすのであれば転職されています。 異業種からの転職の場合は、転職先の企業の給与水準によるため、一概にはいえません。

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第二新卒採用を始めたプラント関連企業

プラント関連の求人についてお聞きします。まず、どのような会社があるのでしょうか。

プラントに関係する会社も主に大きく3つに分けられます。プラントを所有する企業、プラントを建設するプラントエンジニアリング会社、プラントを構成する機器を製造するメーカーです。

プラント関連の求人は多いのでしょうか。

どの企業であっても、非常に求人が多いのが、技術分野の募集です。環境問題への取り組みに加え、DX(デジタルトランスフォーメーション)による高品質・高効率・高付加価値なものづくりに取り組んでいるため、多くの人材を採用しています。大手では年間100人から300人の中途採用を行っているところもあります。そのうち7割から8割が技術者の募集です。 また、技術分野については、従来は行っていなかった第二新卒のポテンシャル採用を積極的に行うようになったのも、近年の非常に大きな変化です。一方でスキル、経験の豊富な50代、60代のベテランの方の転職も多いです。

プラントの場合、転職時に待遇はよくなりますか。

プラント関連の技術職は、転職によって給与が下がるケースはまずありません。理由としては、給与水準の高い企業が、意欲的に採用をしているためです。 第二新卒であっても、会社の規模が大きくなることによって数十万円は上がります。またベテランの方であれば、250万円上がったケースもあります。

転職回数や求められる資格はありますか。

転職回数は、大企業ほど気にしていて、会社の規模が小さくなるほど許容範囲が広がるのは、エネルギー業界と同じです。また、電気主任技術者の第一種や第二種、第1種ボイラー・タービン主任技術者、機械器具設置の監理技術者など難関資格を持っていれば、求職者側が転職先の企業を選べる状況です。 本記事についての簡単なアンケートにご協力をお願いします。 アンケートはこちら

文:吉田 洋平 写真:今村 拓馬 掲載日:2022年11月17日