管理職で感じた「このままでいいのかな」
以前は日系のITベンダーにお勤めでした。転職を考えるようになった経緯を教えてください。
当時の私は40歳を超え、マネージャーとしてクラウドサービスの立ち上げから運営の主導までを担当していました。責任ある立場でやりがいのある仕事を任され、モチベーションも高く、忙しいながらも充実した日々を過ごしていたと思います。 一方、「このままでいいのかな」という、漠然とした思いもありました。というのも前職では、マネージャーになるとプロジェクトの進捗管理や部下の育成といった仕事が業務の大半を占め、最新のITに直接触れる機会が少なくなっていたからです。急速に進化していく最新技術に関するスキルをアップデートしなくていいのだろうか、と感じていました。
また役職が上がったことによって、お客様を実際に訪問し、お客様の生の声を聞く機会がほとんどなくなってしまったことも寂しく思っていました。それまで「ITの力を活用してお客様の役に立ちたい」という思いで仕事をしていたので、お客様とじかに接さずにマネジメントすることがしっくりきていませんでした。
具体的にはどのように転職活動を進めていったのですか。
もんもんとしながらも当時の会社の報酬や待遇には不満はなかったので、最初は「転職しよう」という明確な意思はありませんでした。ただ仕事が落ち着き、考える余裕ができたタイミングで、ビズリーチに登録しました。「自分の会社以外の世界をのぞいてみたい」「他と比べて自分の会社はどうなのかを知りたい」と思ったからです。 そこから2~3カ月、多くのご連絡をいただきましたが、そのうち、興味をひかれた人材会社や企業の話を5~6社ほど聞きました。
カジュアルな面談で芽生えた共感
そんななかで、転職先となる日本IBMとのご縁があったわけですね。
当たり前ではあるのですが、他の会社や人材会社からは最初の面談から、「転職してもらおう、応募してもらおう」という意思を比較的強く感じました。ところが日本IBMは「カジュアルに話をしましょう」という形で、あまり転職の意思が強くない私の思いを尊重してくれるような姿勢でした。そこにまず違いを感じましたね。 面接を通じ、クラウド事業の責任者とざっくばらんに話せたことも大きかったです。「最新のITにじかに触れながら自分をアップデートしていきたい」「マネージャーであっても現場のお客様に直接触れながら仕事をしたい」という私の考えにとても共感してくれました。この会社であれば、「テクノロジーにどっぷりとつかりながら、プロフェッショナルとしてお客様の信頼に応えていけるのではないか」と感じました。本当に転職を考えたのは、それからですね。そこから1カ月弱の選考フローを経て、転職を決めました。日本IBMの選考はとても早かった印象です。
急速に転職にかじを切った形ですが、17年勤めた大手企業を退職することに不安はありましたか。
一昔前の「60歳定年時代」であれば、社内での成り行きに身を任せていてもよかったのかもしれません。ですが、今は「人生100年時代」といわれています。60歳を超えても仕事をしていくことを考えたら、まだ半分にも達していません。そう考えると、40代からマネジメントに過度にフォーカスすることに不安がありました。 私が新入社員のときに比べ「IT」の位置づけが大きく変わっています。かつてはビジネスをサポートする「裏方」といった感じでしたが、今ではまさにITはビジネスの中心です。どんどん新しくなっていくITに触れ続け、自らをアップデートしていかなければ、新しいビジネスに対応できません。そう思うと、やはり業務のなかで直接テクノロジーに触れていかないといけないという思いが強くなっていきました。
転職で「意欲高まった」
退職の意思はどのように伝えたのですか。
前職の会社とのやりとりには神経をつかいましたね。責任ある立場でしたし、家族のように思って一緒に仕事をしてきた仲間や部下もいましたから。できるかぎり迷惑にならないように3ヶ月ほどの引継ぎ期間を設けて対応しました。
実際に転職をしてみていかがですか。
前職ではなかなかできなかった資格取得に積極的に取り組むようになりましたね。会社が奨励していることもありますが、やはり、実際に自分でも現場業務に関わるようになり、学習意欲が高まったことが大きいのだと思います。クライアント企業からの期待を直接感じる機会も増え、転職活動時のやりとりが「本当だった」と確かめられた印象です。 厳しい部分もあります。単純な比較はできませんが、前職は管理職の役割に集中できたのに対し、今はプロジェクトにプレーヤーとしても関わります。その双方で成果を出さなければいけません。業務時間の管理や生産性に対する意識は高まりましたね。どうすればうまくできるか、悩み考える日々ですが、自分が望んで得た環境ですし、これが自分を成長させてくれると思えています。
余談ですが、私には12歳、8歳、6歳の子供がいます。転職でプライベートの時間は確保しやすくなり、下の子の幼稚園の送り迎えをしてあげられるようになりました。前職のときは子供が小さかったこともあり、企業名などを認知してくれていなかったのですが、今は街で会社のロゴを見つけると子供が教えてくれるようになりました。会社の家族イベントなどに参加するようになり、家族にも会社への愛着を持ってもらえたのも、素直にうれしいですね。
40代で初めての転職でした。一般的に、年齢を重ねると転職は難しくなるとの見方もありますがどうお感じですか。
「少し遅いかも」という思いはありましたが、今は、年齢であきらめないで良かったと思っています。自分もそうだったので、長く同じ会社にいると、新しい環境に飛び込むことに戸惑いがあることはよくわかります。でも、今、現状に不安や危機感を持ちながら、まだ行動に移していない人がいるのであれば、まずは自分の会社の外を見ること、他社はどうなのか知ることから始めるといいのではないでしょうか。
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撮影:横濱 勝博