きっかけはコロナと早期退職募集
前職は自動車部品製造の上場企業でした。転職を検討した背景を教えてください。
直接のきっかけは、会社の早期退職の募集です。新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、若手も対象にした早期退職の募集がありました。 ただ自分としてもちょうど結婚して子供も生まれ、働き方を見直したいなと感じていました。それまで残業ばかりで平日はなかなか家族と過ごす時間を取れませんでしたが、コロナで残業が減り、家族と過ごす時間が増えたことで、その価値を改めて感じるようになっていました。
人件費抑制のための早期退職は、一般的にもう少し年齢が高い方を主な対象とする印象です。社内に残るという選択はありませんでしたか。
実はコロナや早期退職がなくても、「このままでいいのか」という思いはあったんです。前職は大手らしく会社としての仕組みや設備が整っていて、非常に仕事はしやすかったと思います。ただ仕組みが整っているからこそ、例えば担当する製品が増えたりしても基本的にやることはあまり変わりません。経験を重ねるにつれて担当領域が広がり忙しくなりはするものの、ルーティンワークを繰り返している感覚が強まっていました。 生産現場の自動化に伴うロボット導入など貴重な機会にも恵まれましたが、実際の業務というと協力企業に発注することが主で、外部でも通用するスキルや経験が身につく感覚は希薄でした。
そんな折に会社からの提案があったので、自分の成長のためにも応募しようと思いましたね。
選考姿勢が決め手の一つ
きっかけが会社要因だとすると、転職活動は少し急に始めた形だったでしょうか。
そうですね。転職活動といっても、具体的にどうしたらいいのかわからないので、とりあえずいろいろな転職サイトに登録をしました。自分でも探しましたが、主にはヘッドハンターの方からの紹介で検討をしていきましたね。 それまでの経験を生かせることも重視しましたが、まだ若いので全く新しい業界でも構わないという考え方でした。あとはやはり、家庭の時間を確保できるかどうかは重視していました。
面接などはどれくらいされましたか。
100社くらい資料などで検討して、実際に面接をしたのは現職を入れて3社ですね。最後だったセキネシールの最初の面接が2020年9月で、実はそのときにすでに1社から内定をもらっていました。そこはグループの従業員では何千人という、株式上場している大手メーカーで、最終的にそちらとの比較になりました。結果として現職を選び、そちらは辞退させてもらいました。
決め手は何だったでしょう。
いくつかありますが、まずは選考の姿勢です。
うまく言えませんが、多くの企業は「うちに来たいなら選考しますよ」という姿勢で候補者と向き合う印象があります。これはそのもう一社に限らず、他社もそうだと思います。 それに対し、セキネシールは人事担当の取締役自らが直接「ぜひ来てほしい」とこちらを口説いてくるようなやりとりでした。初回の面接はオンラインでしたが、2回目に本社に呼んでくれて、社屋と工場を直接案内してもらいました。イメージが湧いたのと同時に、親近感も覚えましたね。
もう一つは、働き方の部分です。
提示された年収水準に差はなかったのですが、月平均の残業時間はセキネシールが8時間だったのに対し、もう一社は35時間と言われました。残業を除けばもう一社のほうが有利になることもありましたが、それ以上に、内定時に伝えられる残業が35時間ということは、少なくとも残業は常態化しているのだろうと考えました。 もちろん担当や時期でも残業は増減するでしょうから、実際の多さは入社してみなければわかりません。しかし前職でも、仕事の担当が増えるたびにどんどん残業が増えていきました。周囲もそれが当たり前だと感じていて、子育てなどがあっても自分だけが残業を減らすのも難しい。もしそうした働き方が前提なら、転職しても前と同じになってしまうと思いました。
「一緒に成長しよう」
決断に不安はありませんでしたか。
それはあります。先ほど「収入面は変わらない」と言いましたが、正直にいえば年金や、今後の昇給の可能性などを考えれば、もう一社のほうが有利だったかもしれません。大企業だから安心という時代ではないと思いますが、体力のない中小のほうが環境に左右されやすいことは確かだと思いますから。 でもそうした部分があっても、自分としてはセキネシールのほうが魅力的に感じました。印象的だったのは、自社のできていないところなどを隠すことなく伝えてくれたことと、その際に必ずそこが「伸びしろだ」と感じられる言葉を伝えられたことです。
「企業側が何か隠したり、取り繕ったりしているな」と感じると不安になりますが、マイナスポイントだけ伝えられてもやはり「大丈夫かな」と思ってしまいます。セキネシールからはそうした不安が少なく、代わりに「一緒に成長していこう」という思いが伝わってきました。
入社されていかがですか。
まず残業のことをいえば、平日も子供と一緒に夕飯を食べられるし、家事も引き受けられるようになりました。実は通勤時間は片道1時間近く増えているのですが、それでも家にいられる時間が増えましたね。妻からも「いい会社に入ったね」と言ってもらえるのが何よりよかったと思います。 仕事の面でいえば、今は工場設備の保全が主な業務となっていますが、そのほかにもIT活用の推進をしたり、溶接の技能を身につけたりと、幅広い業務に関わらせてもらっています。大手では「この仕事をやるのはこの部署、この担当」と細かく決まっていますが、それと比べると何でもするイメージですね。でもそうすることで、社内のいろいろな業務に当事者意識が持てて、「ビジネスの構造を知る」楽しさも感じられています。
「転職の時が、就職活動の本番」
早期退職という形で転職されましたが、この経験を振り返って思うことはありますか。
前の会社に新卒入社したとき、人事の方に「この会社に骨を埋める必要はない」と言われたことが今でも心に残っています。私は父が警察官で、もともとでいえば「仕事を変える」という選択をリアルには感じていませんでした。日本では「同じ会社に居続けることがいいこと」という価値観が強いとよくいわれますが、私自身、そう思っている一人でした。 大学を出る新卒時点で考えられることなんて、たかが知れていますよね。少なくとも自分は「家から近い」とか「知り合いがいるから」といったことも会社選びの軸の一つにしていました。それが間違いとは言いませんが、でも社会に出てもっと重視すべきこと、考えるべきことがわかるということもあると思います。
もし転職することを前提に考えるなら、新卒時ではなくてその時が「就職活動の本番」なのではないかと思います。一度社会に出て、自分がどんな人間なのかを知ると会社選びの軸も変わります。そうやって道を選ぶことが、本当の就職のような気がしていますね。 本記事についての簡単なアンケートにご協力をお願いします。 アンケートはこちら
写真:横濱 勝博 掲載日:2022年8月3日