40代後半で未経験職種でも希望上回る年収に ポジションに感じた「近さ」

現在建築などを手がける企業グループの広報室長である高山真由さん(仮名)。あこがれていた航空業界をコロナ禍の影響で離れたものの、マーケティングや広報など経験職種を広げ、待遇も良くなってきているそうです。どのように転職活動を進めてきたのかなどを聞きました。

高山 真由(仮名)

旅行代理店など数社を経て、外資系航空会社に入り、営業やプロモーションなどを担当。メーカー1社を挟んで、現職。48歳。

憧れの業界で10年以上働いたが

いままでのキャリアを教えてください。

大学を卒業して海外旅行を専門に取り扱う旅行代理店に入り、1年半くらい働きました。元々航空会社で仕事をしたいと思っていたので、日系航空会社のグループ会社、チャーター便を扱う会社を経て、前々職である外資系の航空会社に営業として入りました。 旅行代理店に対して、ツアーなどにおいて自社のフライトの利活用を促すことに加えて、宣伝・プロモーションの中心的な役割も同時に担っていました。顧客が旅行業界ですので前職のコネクションも生かせ、会社の規模も100人に満たないくらいでしたので、プレーイングマネージャー的な感じでバリバリと仕事をしていました。すごく楽しく、すごく好きな仕事で、結局前々職の会社には10年以上在籍しました。

慣れ親しんでいたうえ、憧れでもあった業界にいながら、転職を検討したのはなぜでしょうか。

コロナ禍ですね。2020年に世界的な感染拡大が顕著となり、いよいよフライトもなくなって無給休暇となりました。「待っていればいつかは元に戻るだろう」と思っていましたが、ふと自分の年齢を考えたとき、「先が見えない状況のまま過ごしてよいのだろうか」と思い始めました。 そんななか、大学院の経営学修士(MBA)コースに入学しました。そこでマーケティングを勉強するなかで「やはり転職をしようかな」と真面目に考え始めました。自分がもらっているサラリーや役職のことを客観視すると、「年齢を重ねるほど上を目指すことはだんだん困難になるだろう」と思ったんですよ。それならば、キャリアの棚卸しを一度きちんとしてみて、次のステップにチャレンジできる場所を探した方がよいのかなと考え、転職活動に踏み出しました。

どのように転職活動をしたのですか。

2020年夏ごろから、ヘッドハンターにお願いする形で転職活動を始めました。ずっと航空業界にいたので、全くの異業種に転職しようとしても難しいだろうなとは思っていたのですが、年明けにあるメーカーに採用されました。そのメーカーは、日系でしたが、あるファンドに買収されて、外資系の人が経営に入ってきている時期でした。外資系企業に在籍し、宣伝・プロモーションを担当していたあたりが評価されて、マーケティングコミュニケーショングループの責任者として入社しました。MBAで学んだ知識を生かせました。

さらに現職への転職を検討した動機はなんだったのでしょうか。

経営陣の交代によって方針転換があり、マーケティングコミュニケーショングループが存続するかどうか怪しくなってきたことが一つです。さらに、今後のキャリアを考えると、もうワンステップ役職を上げて、それに見合った報酬をもらえるようにしたいと考えました。2022年の夏ごろです。

今回の転職活動は具体的にどのように進めたのでしょうか。

転職サービスにも人材紹介会社にも両方登録しました。転職サービスのなかには、ダイレクトで声をかけてくる企業もあったのですが、実際スカウトのメッセージがいきなり来ると少し不安に感じました。また、その企業を自分で調べて判断するのも、負担だなと思いました。なので、すべてヘッドハンターを挟む形での応募としました。

なぜでしょうか。

まず楽ですよね。また、基本的にヘッドハンターは相手企業と話をしているので、その企業がどのような会社でどういった雰囲気なのかといった詳細をきちんと把握しているわけです。そういった情報を聞かせてもらえるので、安心して転職活動ができました。 航空会社から異業種であるメーカーへの転職にチャレンジしたとき、あるヘッドハンターは「取りあえず頑張ってみましょう」などとマメに連絡をくれて何度も励ましてくれました。もちろん自らの成績に関わるので一生懸命やってくれているのだと思いますが、それを割り引いても、連絡をくれるタイミングは適切で「営業」として素晴らしかったと思います。「本当に親身になってくれている」「私の希望をちゃんとくみ取ってくれている」と信頼できるヘッドハンターさんに出会えて本当に良かったです。そういうヘッドハンターの方が2人いて、転職するときに相談できる状況になっていました。

フリーズになった採用

ヘッドハンターを通じて何社くらいにアプローチしましたか。

話を聞いたのは3社で、最終的に内定をいただいたのは建設や医療などを手がける現職の1社です。現職を受ける前に、外資系のメーカーの選考が進んでいました。マーケティング部門の立ち上げということで魅力的に感じるポジションでした。

なぜそちらに入社することにならなかったのでしょうか。

選考は進んで、オファーの手前までいったんですよ。でも、そのタイミングで、海外の本社がファンドに買収されて、採用がフリーズ(中止)になってしまいました。 そのあと、別のヘッドハンターから「広報の責任者としてこの会社はいかがですか」と、現職の紹介がありました。私はそれまでいわゆる広報という職に就いたことはなかったので、最初は求められているものと、自分の経歴やスキルが本当にマッチしているのかどうかは分かりませんでした。

「立ち上げ」に感じた魅力

それでもチャレンジしようと思ったのはなぜですか。

仕事内容が「広報室の立ち上げ」と聞いたからです。組織の立ち上げに関わることは面白いし、私は何事もゼロベースで積み上げていくことは楽しいと感じる性格です。ですので、広報という職種を経験したことがなくても、いままでの経歴と近い部分もあり、いろいろとできることはあるだろうととらえました。

面接はどうでしたか。

まず人事部長との面接がありました。コロナ禍の影響でまだ対面は控えましょうという時期でしたが、直接会ったほうが人となりが分かりやすいということで、対面方式での面接でした。私は自身の経歴を説明し、広報室の立ち上げに挑戦したいことを伝えました。現職の会社としても、全く異なる業界から新しい考え方、新しい空気感を入れたいというのがあったようで、マッチしたという手ごたえがありました。人事部長面接の後は社長面接がありました。

社長面接はどんな感じでしたか。

社長はオーナーであり創業者です。かなり多角的な事業展開をリードしてきた経験がありました。面接の中で印象的だったのは「手がけている事業について、もっと外に発信していくことをやってほしい」とのリクエストでした。実際に知名度の高い事業会社もありますが、確かにそれ以外は私自身もほとんど知らなかったので、納得感がありました。その後内定の連絡をもらいました。

待遇はどうだったのでしょうか。

前職と比較して「年収ベースで100万円くらい上がれば」と書いていたのですが、ヘッドハンターから連絡をもらったとき、希望額をさらに上回る額が提示されました。だいたい前職と比較して、200万円アップくらいでした。非常にありがたいことではありますけれど、その分要求される水準も高いでしょうし、手放しで喜べたというよりは、責任を強く感じました。

ライフワークも視野に入れた選択

他の会社を見てみようとは思わなかったですか。

思いませんでした。大まかに言って3つの主力事業で稼いでいる会社です。広報は、直接売り上げなどの数字は持てないですよね。とはいえ営利企業なので、間接的に売り上げに貢献しないといけない。広報活動が、企業価値と売り上げとどうつながり貢献しているのかを示していくのが新しいチャレンジで楽しそうだと感じたのが大きかったです。 もちろん待遇も満足のいくものでしたし、創業者のそばで働けるという経験は、なかなかないだろうという判断もあり、他の企業には応募しませんでした。

入社してみていかがですか。

元々、私は他の人がやっていないことをやりたいと思うタイプですし、昔営業担当をしていたときも人が触っていないところを開拓するなどしていました。広報の分野は今回が初めてですが、会社をもっと世の中にアピールするためには、やはり皆で同じ目標を共有し、それぞれが最高のパフォーマンスを発揮できる環境を作って実績を残さなければなりません。それはどの職種でも一緒だと思います。 部下は20代、30代が中心で若いこともあり、一人一人とコミュニケーションをしっかり取るようにして、モチベーションが下がっていないか定期的にチェックするようにしています。良いチームを作ってまとめていくことはすごく楽しいですね。

今後のキャリア展望を教えてください。

いまの仕事をきっちりこなしていきたいということ以外でいうと、航空会社の時代にある東南アジアの国の女性と知り合いました。現地で農作物を加工して製品にしてそれを販売している方です。なかなか育てるのが難しい農作物なのですが、その方は、強く思い入れがあって、ストーリーを聞いたときに感動したんです。人生100年時代といわれますが、企業に雇用されて働くことを辞めても、自分で一生続けられるライフワークを作りたいと思っています。経営者との距離の近さから得られる知見もありますし、それ以外の新しい経験も積めていますので、いまの会社で得られた知見を活用して、将来のソーシャルビジネスの立ち上げに向けて、スローに準備できるといいですね。 本記事についての簡単なアンケートにご協力をお願いします。 アンケートはこちら

写真:横濱 勝博 掲載日:2023年6月16日