過去と違った40代の転職活動
簡単にご自身の経歴を教えてください。
もともと弁護士を志して、大学卒業後もコーヒーチェーンのスターバックスでアルバイトをしながら司法試験に挑戦しました。しかし合格することはできず、働きぶりを評価してくれていたスターバックスにそのまま就職して店長も務めました。その後、マーケティング支援のカタリナマーケティングジャパンや、アプリ開発のアイリッジ、キャッシュレス決済サービスのインフキュリオンなどで勤めました。現職の三井住友カードは7社目になります。
前職からの転職を検討した背景を教えてください。
スタートアップではありうることと思いますが、参画する予定で入社した新規事業の計画が中止になってしまったんです。営業などほかの部門への異動の打診はあったのですが、それならば別のチャレンジをしたいなと考えました。
今回の転職と、それ以前の転職で異なる部分はありましたか。
当時43歳だったのですが、年齢が徐々に上がってきていることと経験社数がやはりちょっと多くなってきたかなという部分もあり、人材紹介会社経由の案件が決まりにくくなってきたという実感がありました。7月に転職活動を始めて、最初の3週間はこれまでの転職活動と同じようにやっていたのですが、「ここに応募したい」と担当者に話しても渋られたり、あまりにもあっさりと「書類送ったんですけどダメでした」と言われ「これ、本当は送ってなさそう」と感じたりすることがあって、「少しやり方を変えたほうがいいな」と考えました。
どうされたのですか。
それまでは、紹介会社から求人企業を担当者に紹介してもらうタイプのサービスをメインに利用していたのですが、企業からの直接スカウトや、さまざまな紹介会社からの案件を幅広く受け取れるマッチングプラットフォームを利用することにしました。 マーケティング関連のコンサルティングやカスタマーサクセス(顧客支援)の業務を探していたので、興味のある企業についてはとにかく応募し、少しでも自分に興味を持ってもらえた企業の話はとりあえず聞いてみるというスタンスにしました。
候補企業の「母集団」を大きくしたほうがいい
やってみて、手ごたえはいかがでしたか。
多分70社くらい書類は送ったと思うのですが、思ったよりも順調で、1カ月後にはそのうち4社から内定をもらえました。知人に転職相談されたときにも言うのですが、通過率が悪くなったのならまずは「母集団形成」をしたほうがいいと思っています。候補企業の数を多く持ったほうが、希望に合う企業に出会う可能性は高まるわけなので。 求人票ではなかなか魅力を感じられなくても、実際に企業の担当者に話を聞いてみたら印象が変わるということはあるわけです。だとすれば最初の時点で絞りすぎず、数ある候補企業から、自分が望む事業に携わることができ価値観が合いそうな会社を選んでいくほうがいいと思いました。

人によるかもしれませんが、私の場合は「1社の内定を得るのに30~40社は応募が必要」と考えていました。数が多いので、自分でスプレッドシートに応募企業を全部リストにして、ポジションや業務内容、感触などを管理していました。 転職経験が少ない方だと、自分の行きたい会社をピンポイントで見定めて、そこがうまくいかないと「どうしよう」と焦ってしまう人もいますよね。転職に慣れてしまったせいか、自分はあまりそうは思わず、まずは母集団の必要な量を形成して、徐々に絞っていくほうが理にかなっていると思っていたので、その点では追い詰められることなく余裕があったと思います。
内定を得た4社はどんな企業でしたか。
いずれも上場前のスタートアップ寄りで、流通・小売り関連にソリューションを提供する企業でした。そのうち、ポジションや事業内容が自分にフィットしそうな2社で迷って、それぞれと条件交渉をしてその結果をみて決めようかなと考えていたのが、同じ年の9月です。
そこから、状況が変わったわけですね。
はい。ある朝起きてスマホを見たら、企業からの直接スカウトが来ていたんですよ。社名は三井住友カードでした。正直、自分が検討していた企業とは業界や規模感などが違いすぎて、最初は何かの間違いかと思いました。 ただ業務内容を見てみると、決済に関連した新規事業であり、自分の経歴との親和性を感じました。私の所属する「アクワイアリング統括部」の「アクワイアリング」とは、主に加盟店を開拓し、契約を結ぶ業務のことです。加盟店でのカード決済手数料が主な収入源となるのですが、それ以外に新たな価値を生み出し新たな収益源をつくる新規事業のプロジェクトメンバーを探しているということでした。 私は加盟店となる流通企業で店長もしましたし、マーケティング支援、アプリ開発、決済サービスなども経験しました。サービス利用者である加盟店の立場も、それを支援するサービス開発者の立場もわかります。さらに新規事業にチャレンジする可能性を感じたので、応募することにしました。

回答期限の迫った内定は辞退
選考がどう進んだか、教えてください。
最初に、今の上司にあたるプロジェクトの責任者に会いました。人柄もあると思いますが、「こんなことをしたいと思っている」ということや、私に期待したいことを情熱的に伝えてくれて、胸がひさびさに熱くなり、ものすごく入社意欲が高まりました。 実は、こんなに大きな会社で働いたことはなかったので、最初は自分の価値観とフィットするのかどうか、不安のほうが大きかったんですよね。大企業は階層が多く、ものごとが進むのが遅いというイメージもありましたが、変化を起こし、新しい価値を生み出す前向きさといったスタートアップのような雰囲気も感じて、心が動きました。 1次面接の通過もすぐにわかって、そこで、その時にあった内定はすべて辞退することにしました。返答期限が迫っていて、三井住友カードの結果をみて判断するわけにはいかなかったからです。
思い切った決断ですね。
それくらい、志望度が高くなったんです。でも、その時点で三井住友カードから内定が出るかわかりませんから、その時点で「母集団」に30社ほど追加して同時並行で選考もしました。別の1社から内定もいただきましたが、結果として三井住友カードに決まったので、この時は迷うことはありませんでした。
選考に自信はありましたか。
スキルの要件は合っていると思っていましたし、面接には比較的余裕を持って臨むことができました。面接の中で役員とも話しましたが、こちらも選考というよりは日常会話といった雰囲気で事業の話で盛り上がりました。対面だったのですが、終わった後に人事の社員から「面接、慣れていますね」と言われました。「これでダメなら仕方ないな」と思えるほど、手ごたえはありました。

「自分も会社を選んでいる」
三井住友カードで働くことを魅力に感じた部分を教えてください。
自分が活躍できるイメージが持てたことも大きかったですが、私が仕事で大事にしている価値観「仲間を作り、変化をもたらし、誰かの1日に幸せをもたらす」ということを実現できると思えたことが大きかったです。「仕事は何をするかも大事ですが、誰とするかも大事」とも思っているので、面接を通じて、同じ目標に向かって切磋琢磨しまだまだ成長できると感じました。自分たちが手掛けた新しいサービスにより、人々の生活がより豊かになり便利になる可能性を秘めていたことも魅力のひとつでした。さらに、年収ベースでいうと前職から大幅に上がりました。「ほんとにこんなにもらっていいの?」という感じではありましたが、その分、身の引き締まる思いで業務にあたっています。
幸運もあったと思いますが、ご自身の転職を振り返って、成功要因があるとしたらどんな部分だと思いますか。
最終的にスカウトで決まりはしましたが、お話ししたように、自分の中で候補をたくさん持つことは大事だと思います。選考なので会社から評価されるわけですが、求職者だって会社を評価するわけですよね。でもほかの候補があるから比較できるわけで、「そこしかない」となると評価なんてできません。選考でも「気に入られよう」として自分を飾ってしまうと、仮に選考に通っても、入社した後に高すぎる期待値とのギャップに苦しむことにもなりかねません。互いに相手が捕りやすいボールを投げあうから成立するキャッチボールのように、「互いにリスペクトし合うコミュニケーションを取ろう」という意識で選考に臨んでいるので、ウマが合う会社はやっぱりわかりますし、相手にもそう感じてもらえるのではないかと思っています。
入社しての印象はいかがですか。
思っていたのと真逆でしたね。入社前は勝手な偏見で、大企業というのはビジネスライクで、いろんな制約があるというイメージでしたが、いい意味で裏切られました。雰囲気は家族的ですし、これはチームの特性かもしれませんが、情熱をもって仕事に取り組む前向きな仲間がたくさんいます。同じチームのメンバーだけではなく部署の垣根を越えて他のチームのメンバーを交えて同じ目標にひたすら向かっていけるのは、どこか高校時代の部活動のような感覚です。実は、プロジェクトとして2年後の目標としていた基準を少し前にクリアしてしまったんですよ。「じゃあ、しばらくのんびりしていようか」と思ってもいいと思うのですが、みんなもっと高い目標に対してチャレンジしようという雰囲気があります。 ああ、先ほど転職の成功要因を聞かれましたが大事なことを言い忘れていました。スカウトを見逃さないこと、ですね。宣伝みたいですが、私個人としては本当に1本のスカウトでこんなに変わるとは、という感じだったので。
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写真:的野 弘路 掲載日:2023年11月27日