デジタルの力で、農業を変え、農林水産省を変える
「農業現場と農業政策のデジタル・トランスフォーメーション(DX)」を推進する農林水産省では、専任の「デジタル政策推進チーム(仮称)」を新設。このチームにデジタル領域での成功体験を持つプロフェッショナル人材を招き入れ、農林水産行政、そして、農業の産業構造そのものを変革しようとしています。デジタル技術の活用によって、農林水産省が目指す農業の未来とは。デジタル政策推進チームの中核を担う2名に話を伺いました。
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募集期間:2019年8月1日(木)〜 2019年8月28日(水)
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持続可能な農業を実現する「現場×行政のDX」
大臣官房 サイバーセキュリティ・情報化審議官(前大臣官房 政策課長)/信夫 隆生(写真中央)
──農林水産省が「農業分野でのDX」を推し進めているのは、なぜでしょうか。
農業人口の大幅な減少により、「人手に頼る農業」から「データと技術を活用した農業」への変革が必要だからです。
現在、主に農業に従事する方々約145万人のうち、約60万人が70歳以上です。新たに参入する方もいますが、それ以上にリタイアする方のほうが多く、10年後には農業人口が大幅に減っていると予想されています。
これまでの農業は、経験や勘を基にした「人の手」によって支えられてきました。培われた技術は大事です。しかし、労働集約的な構造のままだと、人手不足によって農業は持続不可能になってしまいます。
そこで私たちが進めているのが、農業分野にデジタル技術を導入し、農業の生産や経営のあり方を変えていくこと。ロボットやICTなどの新しい技術を用いて超省力・高品質生産を実現する「スマート農業」を当たり前にし、2025年までに農業の担い手全員がデータを活用した農業を実践することを目標にしています。
──具体的に、どのようなデジタル技術を農業に活用されているのでしょうか。
例えば、ドローンを使った農薬散布が急速に広がっています。作業を半自動化できるため、人の手に比べて時間短縮・効率化を図ることができますし、ドローンに搭載したカメラと人工知能(AI)により、作物の生育状況に合わせて農薬のまき方を変えることもできます。
その他、センサーを使って水路の開閉を行うなど田畑の水の管理を自動化したり、無人走行トラクター・田植機を導入したりと、さまざまなデジタル技術が実用化されています。
ノウハウの継承にも、デジタル技術は一役買うことができます。収穫時の農産物の選別は熟練の技であることが多く、その技術を未経験者が習得するには年に1~2回の収穫期に直接見て学ぶしか、その機会がありませんでした。そこで開発が進められているのが、ウエアラブルカメラ。農産物を選別する様子をデータとして残し、蓄積することで、多くの人がより手軽にノウハウを学べるようになります。
このようなプロジェクトの数々は、2019年6月に、総理大臣を本部長とする政府の「農林水産業・地域の活力創造本部」で了承された「農業新技術の現場実装推進プログラム」に盛り込まれており、多数の民間企業の協力も得ながら進められています。
──農業の現場だけでなく、行政側の変革も同時に行われているそうですね。
はい。農業分野のDXを進めるには、行政側のデジタル化も必須です。特に、面倒な書類手続きをデジタル化し、申請にかかる農業者の負担を減らすことで、農業者の持っている力を、生産・販売方法や経営判断などの創意工夫が必要な部分に使っていただくことが大事です。このため、農林水産省では、行政手続のオンライン化を実現する「共通申請サービス(仮称)」の構築を進めています。行政手続のなかで蓄積されるデータを活用すれば、政策立案に必要な新しい洞察も得られるのではないかと期待しています。
また、農業政策の情報をしっかり現場に伝えたいという思いから、スマートフォンアプリ「MAFFアプリ」を開発中です。農林水産省から政策情報がプッシュ通知で届き、農業現場からもご意見やご要望を農林水産省に直接送信できる双方向性のあるアプリです。さらに、民間事業者のシステムとの連携も図ることで、官民の連携を強化しています。
コストやデータ連携における課題を解決し、見えてくる未来とは
──さまざまな取り組みを進めていくなかで、感じられている課題などはありますか。
大きく分けて、2つの課題があると思っています。1つは、デジタル技術や高度な農業機械を導入する際にかかる、農業従事者側のコストの問題。導入費用の共同負担と機械のシェアリング、リースの活用など、コスト面の解決策についてはまだまだ検討の余地があります。しかし、一番重要なことは、コストに見合うだけのベネフィットを実際に生み出すために、そうしたスマート農業技術を前提とした生産体系を現場に実装させる必要があるということです。
これに関連するのですが、もう1つの課題が、農業に関わるさまざまなデータが散在しており、利活用できていないこと。ベンダーやメーカーによってシステムが異なっており、データ連携がしづらい状況があるのです。これでは、デジタル技術や新しい機材を入れた意味が大きく損なわれます。
この対策として、農林水産省では農業データの連携を可能にするプラットフォーム「農業データ連携基盤(WAGRI)」を構築し、2019年4月より本格運用を開始しています。WAGRIを通じて多様なデータの連携を進めれば、ベンダーやメーカーはより適切に農業者にサービスを提供できるようになり、農業者はそれらを利用して生産性の向上や経営の改善を図りやすくなります。
──「農業分野のDX」によって実現したい未来は、どのような姿でしょうか。
農業政策の究極の目的は、いかなる状況であっても、国民の皆様に食料を安定供給すること。これは、いつの時代も変わりません。一方で、食に対する国民の関心は多様化し、最近では海外でも日本の農産物への需要が高まっています。「デジタル化」の素晴らしいところは、それまでつながっていなかった要素と要素を結びつけ、イノベーションを起こすこと。農業分野でもイノベーションをどんどん起こし、国内外の食への需要を満たしていくことで、日本の農業を強くしたいと思います。
新設するデジタル政策推進チームで、「新しい農業」を創る
──デジタル化を推進していく専任のデジタル政策推進チームを新設する背景を教えてください。
農業の変革を進める今のフェーズは、いわば新しい産業の立ち上げ期にも匹敵すると考えています。デジタル技術を前提とした政策の企画立案が必要ですが、司令塔と呼べる専門部署が省内にありません。また、目まぐるしく変化するデジタル領域での知見の蓄積も十分とは言えません。このため、農業政策の策定など行政側の実務を担う職員と、デジタル領域のプロフェッショナルである外部人材による混成チームを作ることにしました。
チームの結成はこれからですが、リーダー1名、サブリーダー1名を含め、合計8名の体制を予定しています。
──チームに参画していただく方に求める経験やマインドは、どのようなものでしょうか。
外部人材の方については、農業に関する知識は必須ではありません。未知の分野でも、デジタルの技術や知見を生かして新しい産業をつくりたいという思いがある方、その過程を楽しめる方であれば歓迎します。
農業のバックグラウンドがない方であれば、現場や地方自治体に出向き、現状を肌で感じていただきたいので、フットワークの軽さや積極性は大切です。
また、今回はデジタル領域で一定の成果を出された方を求めていますが、複数名の方に参画していただく予定なので、担当されていた領域や分野は問いません。プロジェクトマネージャーとしてプロジェクトを成功に導いた方、データ分析やシステム開発に明るいエンジニアの方など、さまざまな方の力を集約したチームにしたいと考えています。
農林水産省内のデジタル変革にも寄与できる
──最初にお任せする業務は、すでに決まっているのでしょうか。
いいえ。一定の青写真は私の頭の中にありますが、チームの皆で議論してから、どこから具体的に着手するか決めようと思っています。農業の現場の改革、それと同時並行で省内業務のDXにも携わっていただきたい。かなり幅広いので、優先順位なども含めて意見交換し、目線を合わせたうえでスタートするつもりです。
──将来的に期待する役割などはありますか。
今後を考えると、農林水産省のなかでデジタル領域に強い人材を育てることは必要不可欠です。そのため、チームに参画していただく方には、ノウハウの共有にとどまらず、ゆくゆくは職員の教育や人材育成にも力を発揮していただきたいと考えています。
──デジタル政策推進チームをどのようなチームにしたいですか。
メンバーの個性を生かして新しいアイデアを生み出し、それをどんどん提案していく一体感のあるチームにしたいですね。だからこそ、ご自身の経験から生まれた意見や思いついたアイデアは積極的に発言していただきたいと思います。
国の取り組みとはいえ堅く考えず、一緒に創り上げていく過程を楽しみながら、自由な発想で農業に新しいイノベーションを起こしましょう。
「農業×デジタル」で積み重なる新しい経験が、キャリア価値となる
大臣官房 政策課 企画官/近藤 清太郎
──近藤さんは約1年前に財務省から異動されてきたそうですね。農林水産省に異動して何か感じたことはありますか。
農業は古い体質の残っている産業という印象がありましたが、その変革に挑んでいる農林水産省では新しい考え方や技術への関心が高く、それらを積極的に取り入れていこうとする人が多いことに驚きました。デジタル技術を前提に産業の構造を大きく変えていかなければならないなかで、将来を見通しながら新たなルールをつくるなど、着任直後から新しい経験ができたのも刺激的でしたね。
──新しい経験とは、具体的にどのようなものでしょうか。
印象に残っているのは、農業分野でのドローン活用に関するルールづくりです。
ドローンの技術は急速に進歩しており、いまやボタン一つで自動的に農薬散布作業を行うことが可能です。しかし、これまでは、第三者の立ち入りが想定されない農地上の飛行であっても、「操縦者のほかに、ドローンの様子を見守る補助者を1人配置しなければならない」という規制がありました。これがドローンの農業利用にとって大きな障害になっていたのです。
そこで、現場での農薬散布の実態や今後のドローン技術の動向について調査を行ったうえで、規制を所管する国土交通省とも協議した結果、補助者なしでもドローンを利用できる農業用の新ルールを設けることができました。これに合わせて、これまで一律に規制していた飛行高度なども、ドローンの性能に応じて柔軟に設定できるように変えました。
非常に速いデジタル技術の進展を見通しつつ、一方で、生産現場の実態も踏まえながら、農業のデジタル変革を促す政策を作っていくのは簡単ではありません。ですが、産業の変革期の今だからこその非常に貴重な経験ができる仕事だと感じますね。
人脈と知見を広げられるオープンな組織体制
──近藤さんから見てデジタル政策推進チームはどんな組織になると思いますか。
メンバーの約半数が外部からの人材で、職員とのバランスはほぼ均等になります。また、デジタル政策の立案には、農業分野とデジタル分野の双方を踏まえた検討が必要になるため、民間人材と職員がお互いに補完する、かなりフラットな組織になると思います。農林水産省のなかでも前例のないチーム編成であり、新しいモデルケースになるのではと期待しています。
また、これから参画していただく方と職員で協働するのはもちろん大切ですが、新しい情報はチームの外にあるため、さまざまな人に会い、あらゆるところからヒントを得られるような外向的なチームになっていくでしょう。
──農業者だけでなく、外部の有識者と交流する機会も多いのでしょうか。
農林水産省では、先進的な農業に取り組んでいる農業者はもちろん、ベンチャー企業の経営者や研究者など、極めて多様な方々と接点を持てるよう取り組んでいます。学びの機会にも富んでおり、これまでもドローンやフィンテックの第一人者を招いた勉強会などを実施しています。農業は本当に「人気者」だなと感じますが、農業分野に関心を持つ方は非常に多く、想像以上に人脈を広げられる環境だと思います。
──「堅い組織」と思われがちな官公庁のイメージと違い、かなりオープンで風通しのいい組織なのですね。
はい。例えば、先日は、「政策のタネコンテスト」という職員による政策公募イベントも行いました。政策アイデアを出し、最終的に事務次官の前で簡潔に発表をするという内容なのですが、短い応募期間に20以上のアイデアが多くの若手から集まり、イベントを企画した職員も驚いていました。
その点では、これから参画していただく方もアイデアや意見を発信しやすい土壌がありますし、チャレンジを後押しする文化も根付きつつあります。
──デジタル政策推進チームに参画することで得られる経験や価値は、どのようなものだと思われますか。
アナログな分野であった農業にデジタルを持ち込むことで、かえって農業の本源的な価値を国民にとって身近なものとして取り戻せる可能性があると思います。
また、農業における高齢化・人口減少という課題は国全体の課題と共通しているため、このチームで働くことでデジタル技術を活用した打開策を見いだせれば、今後、他の公共分野でも生かせるノウハウ・キャリア価値となるはずです。
募集職種
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新設『デジタル政策推進(DX)チーム』配属デジタル政策プロデューサー
農業の現場と行政においてデジタル技術を前提とした変革(デジタル・トランスフォーメーション)を推進し、農業における新たな価値を生み出していくため、新たに農林水産省内に設置される『デジタル政策推進(DX)チーム』(仮称)で活躍いただくデジタル政策プロデューサーを募集します。 農業分野の経験は問いません。サービスやオペレーションのデジタル化を推進した経験や、データの利活用を通じて培ったスキルなどを、農業という新しい分野で活かしたいという想いをお持ちの方にお越しいただきたいと考えています。新規設立部署のため、自ら能動的に課題設定、データ収集分析、具体的施策への落とし込み、工程管理を行い、これからの農業現場・農業政策のデジタル・トランスフォーメーションを牽引するような働き方をお願いします。 DXチームのミッションは、事務次官直轄の組織として、以下のようなアジェンダについて省内を統括し、全体最適化されたデジタル政策を統合的に推進することです。デジタル政策プロデューサーには、これらのアジェンダに関する具体的取組の企画・実施について、担当部署と密にコミュニケーションを取りながら、デジタル技術を前提とした新たな農業への変革に向けた舵取りをしていただくことを期待しています。 ◆スマート農業の現場実装・農業データの流通促進 農作業の省力化や農作物の高付加価値化を実現するスマート農業の現場実装を推進し、データ駆動型農業経営を普及する。 (施策例) ・ スマート農機や生産管理システムの間のデータ連携を円滑化するためのデータ標準化 ・ 農業データ連携基盤(WAGRI)を始めとする農業情報流通プラットフォームの構築 ・ 農産物の生産・流通における知的財産権・データセキュリティの確保 ◆農業政策の変革・行政の効率化 デジタル技術を活用して行政手続きを効率化し、ユーザーの利便性向上を図るとともに、デジタル技術を前提として政策のあり方を変革する。 (施策例) ・ 農林水産省共通申請サービス・農業者ポータルの構築による行政手続きのオンライン化 ・ 政策立案へのデータサイエンス実装に向けた行政データのオープンデータ化・標準化 ・ GISを活用した農地情報の一元化・基盤情報化 ・ 農業者とのコミュニケーションにおけるデジタルマーケティングの導入 ◆その他、農業のデジタル・トランスフォーメーション推進に対して有益な施策の立案 等 【選考方法】 第1次選考:書類選考(履歴書、職務経歴書) 第2次選考:面接選考(※申込後、第1次選考を経たのち随時面接) ※詳細については本求人へのエントリー後にご連絡いたします。