「県民参加」を促す広報戦略で、福井の「未来地図」を描く
2023年に北陸新幹線が福井、敦賀まで延伸するなど、大きな変化のときを迎えつつある福井県。まちづくりの主役である県民とともに10~20年後のあるべき福井の姿を描く「福井県長期ビジョン」の策定に向けて、福井県庁では2019年6月に未来戦略課が生まれました。今回は、未来戦略課で広報戦略を担う未来戦略アドバイザーを副業・兼業として募集。福井県だからこそ実現できるプロジェクトや未来戦略アドバイザーとして働く魅力について、未来戦略課の藤丸伸和氏と岩井渉氏に伺いました。
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募集期間:2019年9月19日(木)〜 2019年10月16日(水)
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100年に1度のチャンスを見据え、動き出した「未来戦略課」
福井県地域戦略部 未来戦略課 副部長/藤丸 伸和(写真左)
──福井県は現在、変化のときを迎えているとのことですが、具体的にどのような状況なのでしょうか。
まず、これまで金沢止まりだった北陸新幹線が、2023年春には福井、敦賀まで延伸します。2030年度までには新大阪までの全線開業を実現してほしいと要望しており、実現すれば東海道新幹線とあわせ、日本の中央部をループ状につなぐ大きなルートが完成するでしょう。
2040年ごろまでにはリニア中央新幹線の全線開業、中部縦貫自動車道の延伸も見込まれ、福井を取り巻く交通ネットワークは今後20年ほどの間で整備が進みます。アクセスしやすくなれば、福井県に訪れてくれる人も増え、県が活気づくと考えています。
このような大きなチャンスを迎えようとしている一方で、他の地方と同じく福井県も人口減少という課題を抱えています。2019年8月時点で77万人ほどの人口は、2040年には65万人まで減少し、65歳以上の人口が37%を占めるようになると予想されており、人口減少や長寿命化に対応した働き方や暮らし方を考えていかねばなりません。
──そんななか、2019年6月に福井県庁に設立されたのが「未来戦略課」です。未来戦略課が生まれた経緯や掲げているミッションについて教えていただけますか。
先を見通すのが難しい今だからこそ、さまざまなデータや有識者の方の意見をもとに「10年後、20年後にどういったことが起きているのか」を予測し、それを踏まえて「福井はどうあるべきか」を考えることが必要となっています。
そうした背景から、2019年4月に新しく就任した杉本達治知事の方針により、「10年、20年先を見据えた長期ビジョンを、県民を含めた全員でつくり上げよう。そして、そのビジョンに向けて、今何をすべきか、一つ一つの政策・施策に落とし込んでいこう」という明確な方針が打ち出されました。
まずは、県が一体となって施策を進めていくための指針となる長期ビジョンをつくる。そのミッションを託されたのが、未来戦略課です。
もちろん、これまでも県庁内の各部・各課で個別に人口減少対策・産業振興政策などを実行してきましたが、軸となる大きなビジョンを持つことで、県庁の結束が一段と強まり、県をよりよく変えていけるだろうと考えています。
県民とともに、「未来の福井」のあるべき姿を考えていく
──今後の福井県の指針となる「長期ビジョン」は、どのように考えていくのでしょうか。
長期ビジョンは、福井県にお住まいの一人一人に深く関係することです。だからこそ、長期ビジョンの策定プロセスには多くの人に関わってもらい、「自分事」として感じていただきたいと思っています。そのため、コンセプトも「みんなで描こう『福井の未来地図』」としました。
プロジェクトはまだ動き出したばかりで、これからさらに県民の方々の意見を伺いながら構築していく予定ですが、3つの観点から議論していこうとしています。
1つ目の観点は、「選ばれる福井」です。これは、福井らしさを大事にし、福井の暮らしやすさや文化力を再認識して磨き上げていくことで、県民が誇りを持てる、魅力的な県にすることを意味しています。
2つ目が「誰もが主役の福井」。人口減少が進むのはネガティブにとらえられがちですが、一方で一人一人に期待される役割が広がり、個々の活躍のチャンスも増えます。互いに多様性を認め合い、共生社会をつくるためにどうすべきかを考えたいと思っています。
そして、3つ目に「成長する福井」。人口減少により人手不足が進むなかでも産業が発展し続けるためには、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)など新たな技術の活用が不可欠となるでしょう。
このような3つの観点から、福井県のあるべき未来の姿を「長期ビジョン」としてまとめていきます。
──今回、未来戦略アドバイザーを募集するにあたって、なぜ外部からプロフェッショナル人材を受け入れようと考えたのでしょうか。
私は昨年まで地域交流課の課長を務めていたのですが、そこで「ふるさと県民」という仕組みをつくったことがきっかけです。
これは「外部人材と一緒に何かやりたい」という要望を持った県内4市町へ福井県外の人材を派遣し、地域の課題解決プロジェクトに参画してもらうというものでした。結果的に、県外から13人もの方々に参加いただき、プロジェクトも順調に進んで好評だったため、「県庁のプロジェクトにも、外部の方々の力を貸していただくことはできないか」と考えたのです。
もう1つのきっかけとして、鯖江市河和田(かわだ)という伝統ある「越前漆器」の産地で開催される、今年で15回目となった「河和田アートキャンプ」もヒントになりました。この企画は、2004年に起こった福井豪雨の際に、ボランティアの学生が支援に訪れてくれたことを機に始まった取り組みです。今では、毎年夏休みに京都や大阪などの大学生が河和田に長期滞在して、地域の方とさまざまなプロジェクトを実施。河和田アートキャンプに参加した学生のなかには、実際に福井県に移住し、新たなイベントを立ち上げた方もおり、地域を盛り上げる活動が広がっています。
こうした活動が展開されるなかで、できるだけ多くの方に一定期間、何らかの形で地域に関わってもらうことが、関係人口増加のためにも大切なのではないかと考えるようになりました。福井県は地域のつながりが強い一方で、人の出入りが少なくまだまだ閉鎖的な部分もあります。
今回の取り組みを通じて行政から意識を変えていきたいと思いますし、外部のプロフェッショナル人材の方に参画していただくことで、私たちが持っていない発想やものの見方、課題解決の手法などを学ばせていただきたいと思っています。
「未来戦略アドバイザー」に期待する新たな広報戦略
──県民の声を生かした長期ビジョンづくりが未来戦略課のミッションかと思いますが、県民を巻き込むためにどのような取り組みを始めていますか。
まず心掛けていることは、長期ビジョンの策定プロセスをオープンにすることです。たとえば、どのように議論が進むのかを知ってもらうために、先日行った初回のミーティングでは、会議の様子をライブ配信しました。
また、長期ビジョンの構想を練るなかで、各界の専門家からアドバイスをいただくこともあります。そうした場合でも、一対一で話を聞く形式ではなく、有識者の方をお呼びしてセミナーを開催し、県民の方々にも参加してもらうなど、広く最新の知見を得る機会をつくるようにしています。
さらに、「みんなで描く2040年 福井の未来地図」と題したワークショップも実施しました。これは、学生、35歳くらいまでの若者、子育て世代の3つのグループに分かれて、2日間ブレーンストーミングを行っていただき、グループごとに「20年後の福井県の姿やそのために必要なこと」を発表してもらうというものです。
このようにさまざまな参加の機会をつくることで、県民が長期ビジョンに興味を持つきっかけを増やしていきたいですし、県民の方々からいただいたさまざまなアイデアは長期ビジョンに反映させたいと思います。
長期ビジョンの策定過程を、ある種「エンターテインメント」のように県民に楽しんで参加してもらえるものにできれば理想的ですね。
──長期ビジョンの策定に多くの県民に参加してもらう取り組みは、福井県にとって新たな挑戦だと思います。未来戦略アドバイザーにはどのような役割を期待しますか。
期待するのは、長期ビジョンの策定過程を県民にわかりやすく伝え、意見を集めるための広報戦略活動を担ってもらうことです。
これまでは県庁で決めたことを発表するという一方通行のコミュニケーションになりがちで、県の行政計画に興味を持ちにくい状況だったと思います。加えて、私たち未来戦略課のメンバーは広報やマーケティング戦略のノウハウや知見に乏しく、「どのターゲットを巻き込むために、どのような手法・メッセージングが適切か」といった視点やスキルが不足しています。
具体的に言いますと、今、出前講座というかたちで、県内の中高生やシニアの方から長期ビジョンについての講演依頼がきています。それぞれのターゲットにどのようにアプローチすれば良いか、一緒に考えていけたらと思っています。
集客に関しても、地域でフィールドワークなどを行っている大学教授に頼んでゼミ生に告知してもらうなど、身近な人とのつながりで地道に行っているのが現状です。これまで以上により多くの人に参加してもらうためには、これまでとは違うアプローチが必要ではないかと思っています。未来戦略アドバイザーの方には、ぜひ広報戦略の知見やノウハウを生かして、プロジェクトを主導していただきたいと思っています。
大切なのは、コミットメントし続けてもらうこと
──長期ビジョンは一朝一夕でつくれるものではないため、県民の方々に一時的ではなく継続的に関わってもらう力が問われるように思います。
おっしゃるとおりです。せっかくセミナーやワークショップに来ていただいても、そこでコミュニケーションが途切れてしまっては、長期ビジョンに興味を持ち続けてもらうことは難しくなってしまいます。
そこで考えているのが、セミナーなどでアンケートを詳しく書いてくれた方や意見交換会への参加者にさらに意見を聞くなど、イベント参加者にコミットメントし続けてもらうための戦略です。特に、ワークショップに参加した県民の方々にとって、自分が描いた未来の実現可能性や発表した内容がどのように長期ビジョンに反映されるのかは大きな関心事となるでしょう。
未来戦略アドバイザーには、県民と継続的に関係性を築き、情報を届け続けるためのコミュニケーション方法なども提案していただけるとうれしいですね。
──副業・兼業という形態で関わってもらう未来戦略アドバイザーの働き方は、県庁にとって初の試みとのことですが、どのような期待がありますか。
今回の募集は、福井県庁にとってトライアル的なものですが、未来戦略アドバイザーの方に活躍していただいたら、今後他の部や課にも外部のプロフェッショナル人材を招いたプロジェクトを展開できるのではないかと期待しています。
私たちが最終的に目指しているのは、福井県内の中小企業と都市部のプロフェッショナル人材をマッチングさせる仕組みをつくることです。地域に根差した中小企業の力と、優れたスキルやノウハウを持った方々の力をコラボレーションさせることで、福井の産業をさらに発展させられると確信しています。
そうした構想を実現させる第一歩として、未来戦略アドバイザーの方とともにプロジェクトに取り組めることを、今からとても楽しみにしています。
コンパクトな県だからこそ、与えられるインパクトも大きい
福井県地域戦略部 未来戦略課 県政デザイングループ 主査/岩井 渉
──未来戦略アドバイザーの方に求めるスキルやマインドなどがあれば教えてください。
長期ビジョンづくりに県民参加を促し、魅力的にビジョンの中身や策定プロセスを伝えられる力を持った方に手を貸していただきたいです。広報戦略やその実行に向けたプランニングなど自由にアイデアを出していただき、実行に向けて一緒に取り組んでいけたらと思います。
特定の業界での経験や、このスキルが必要といった条件はありません。面接ではぜひ、あなたのキャリアや得意なことを生かして、「未来戦略アドバイザーとしてどんなことがしたいのか」を教えてください。
また、マンパワーやコストなどの事情により、ご提案いただいた施策すべてを実現することは難しいかもしれません。そんななかでも、「小さいことでもいいから、できることからやってみよう、変えていこう」と考えられる方に、ぜひ来ていただきたいですね。
──他県ではなく福井県で、未来戦略アドバイザーのような広報戦略活動に携わる魅力とはどういったところなのでしょうか。
福井県は人口77万人、市町村数も17と非常にコンパクトでまとまりがある県なので、広報活動のインパクトを生み出しやすいのではないでしょうか。施策は県庁の考えとして県全体の政策づくりに反映されやすく、提案・実行したことが福井県全体に浸透していく過程を身近に体感できるので、やりがいは大きなものになるはずです。
幸福度1位の県で、「福業」にチャレンジする
──自治体で初めて働く方にとって、現場の受け入れ体制や職場の雰囲気は気になるところかと思います。そのあたりはいかがでしょうか。
入庁後は、わからないことや気になることをいつでも相談できるように、私がパートナーとしてマンツーマンでサポートを行い、仕事も一緒に進めていきます。また、未来戦略課は県庁のなかでも民間企業や海外事務所へ派遣された経験のあるメンバーが多いこともあり、皆で新しい仲間を受け入れ、バックアップしようという空気が流れている職場です。メンバー全員が長期ビジョンづくりに関わっているため、コミュニケーションの頻度が高く、困ったことがあっても協力を得やすい環境なので、安心して活躍していただけると思います。
──最後に、未来戦略アドバイザーに興味を持っている方に向けてメッセージをお願いします。
福井県は、日本総合研究所などが調査し、発行された「全47都道府県幸福度ランキング2018年版」で1位に選ばれるなど、子育て環境や医療・福祉体制も充実しています。今回は副業・兼業で福井県庁のプロジェクトに関わっていただく方を募集していますが、参画していただいた方にとって、この機会が福井県で働くなかで幸福を感じていただける「福業」の場になればと思います。ご自身の経験やスキルを生かして県のプロジェクトに挑戦してみたいという方のご応募をお待ちしています。
募集職種
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【副業兼業】未来戦略アドバイザー/20年先の福井県のビジョンを伝える広報戦略担当
◆募集背景 現在、福井県では、2019年4月に新たに就任した杉本達治知事の方針により、今から20年先、2040年における福井県の将来像を描く「福井県長期ビジョン」を策定しています。2040年の福井県は、人口減少や長寿命化がさらに進む一方で、北陸新幹線などの交通網整備による大交流化、AI・IoTなどの進展による技術革新など大きな環境変化が想定されます。これらの変化を想定し、「次の世代にどんな福井県を残していきたいか」「どんな福井県にしていきたいか」「(理想の将来像に向かって)いま何をすべきか」といったことをテーマに、県内のあらゆる世代の方と意見交換をし、年度末の完成を予定している長期ビジョンに反映していくこととしています。 この長期ビジョンは、全福井県民に参加いただき、県民の思いのつまったものにしていきたいと考えています。一方で、このビジョンの県民の認知度はまだまだ低く、県民の具体的なアクションにまで繋がっていない状況です。完成したビジョンを県民と共有し、福井の未来像に向かって、県民一人一人に行動してもらうためには、このビジョンの内容を全県民に理解していただくことが不可欠です。ぜひ広報やマーケティング戦略のノウハウや知見をお持ちの方に、福井県の「未来戦略アドバイザー」になっていただき、このビジョンの内容や策定過程を県民に分かりやすく伝えていくお手伝いをお願い出来ればと考えています。 ◆業務内容 「未来戦略アドバイザー」として、福井県の長期ビジョンの広報戦略を担っていただきます。 ・ターゲットごとのメッセージングやイベント等の検討(および実施) ・オリジナルの広報ツールの検討(および開発) ・イベント等参加者にコミットメントし続けてもらうための戦略の検討(および実施) など ◆得られるキャリア価値 福井県は人口77万人、市町数も17と非常にコンパクトでまとまりがある県なので、提案・実行したことが福井県全体に浸透していく過程を身近に体感していただくことができます。また、今回の長期ビジョンのような総合計画は、どの自治体でも必ず作るものなので、自治体の事業や地方・地域での仕事に関心がある方にとって、その過程に携わることは今後に活かせるものと考えています。 ◆所属部署 私たち未来戦略課は、今年6月に誕生したばかりの新しい所属です。23名の職員がおり、メンバー全員がこの長期ビジョンづくりに関わっているため、コミュニケーションの頻度が高く、困ったことがあっても協力を得やすい環境です。