約20年ぶりに誕生する高専の学校長として、変化創造に挑戦する
2023年の設立を目指す「神山まるごと高専」は、テクノロジーやアート、心理学・哲学、論理的思考やディベートなど幅広いカリキュラムに加え、徳島県神山町というフィールド全体を学びの場として捉える、次世代型高専として全国各地から大きな注目を集めています。今回募集する学校長は、神山という地から未来の「野武士型パイオニア」を輩出する教育の中心たる人材です。今回は、「神山まるごと高専」プロジェクトを推進する3名に、このプロジェクトの意義、そしてどのような人材を求めているかを聞きました。
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募集期間:2019年10月10日(木)〜 2019年11月6日(水)
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グローバルリーダーではなく、「野武士」を育てたい
Sansan株式会社 代表取締役社長/寺田 親弘
──はじめに、クラウド名刺管理サービスを提供するSansan株式会社の代表取締役社長を務める寺田さんが、なぜ「神山まるごと高専」プロジェクトを立ち上げるに至ったのか、その背景を教えていただけますか。
Sansanの経営は私にとっての主戦場であり、本業です。しかし、自分が持つリソースを使って、「Sansanとは違った形で社会貢献できないか」という思いはずっと持ち続けていました。神山町に高専をつくるという構想が生まれたのは、さまざまな偶然の出会いが積み重なった結果としかいえません。
そもそも「高等専門学校」という仕組みすら、Sansanを創業するまではよく把握できていませんでした。しかし、実際に会社を立ち上げて採用活動をするなかで優秀な高専生が数多くいることを知りましたし、中学校を卒業した時点で5年間かけて専門技術を究めるという彼らの覚悟には目を見張るものがありました。
もともと高専は高度成長期に合った日本の産業やものづくりを支える仕組みだったと思いますが、これを現代版にアップデートすることができれば、高専という学業パッケージはそれ以上の強みを持つものになるのではと感じたのです。
──その高専を設立する土地として神山町を選んだのは、やはりSansanのサテライトオフィスを神山町につくったことが大きかったのでしょうか。
そうですね。2010年に作ったサテライトオフィスを通じて生まれたご縁が、今回のプロジェクトにつながっていることは間違いありません。なんといっても、神山というロケーション、そして私たちが「神山まるごと高専」を通して育てたいと感じている「野武士型パイオニア」と呼べる人材が数多く集まっていたことは大きかったです。
現在、多くの方にプロボノ(専門的な知識・スキルや経験を生かして社会貢献するボランティア)としてプロジェクトに参画していただいていますが、いずれも神山を起点として知り合った方ばかりです。神山町は地方創生の成功例だと言われていますが、その町のモメンタム(勢い)をつくってきた人材に恵まれていることは、プロジェクトを進めるなかで非常に心強く感じています。
テクノロジーやアートを「刀」として、道を切り開く「野武士」に育てる
──先ほども出てきましたが、「神山まるごと高専」プロジェクトを通して輩出したいと考えている「野武士型パイオニア」とは、具体的にどのような人材を指すのでしょうか。
「神山まるごと高専」では、従来の高専と同じくテクノロジーの理解や習得に力を注ぐ一方で、従来の高専ではあまりなかったアートやデザイン、マインドフルネスなどもカリキュラムに加える予定です。
しかし、大事なのはこれらを学ぶことを目的にするのではなく、学んだことをそれこそ刀のように自分の武器として扱えるようになること。どのようなフィールド・環境でも自らの武器を使って自由に駆け回り、生き抜いていくこと。そして、自らがあらゆるものに変化を生み出していくこと。そうした力を身につけた人材を「野武士型パイオニア」と呼んでいます。
既に表面化している社会課題に対して、AIなどの先端テクノロジーやアートの力を駆使して解決するアプローチを探すことも良いでしょう。しかし、自分自身で課題が何かを考え、抽出し、そこに解決策を提示できるようなバイタリティーがある人材を育成したいと考えています。
「神山まるごと高専」の設立は、順調にいけば2023年、最初の卒業生が生まれるのは2028年です。変化がますます激しくなる時流のなかで、「2028年にはどんな社会課題が生まれているか」を今から正確に予測するのは非常に難しいもの。だからこそ、自ら課題を考え、決断し、動ける人材を輩出することが、このプロジェクトの大きな意義になると信じています。
──そうした次世代を担う「野武士型パイオニア」の育成をけん引する学校長を今回募集しますが、どのような人に応募してほしいとお考えでしょうか。
AI・テクノロジーやアートといったキーワードを掲げてはいるものの、現職のエンジニア、あるいはアーティストでなければ募集対象にならないということではありません。テクノロジーやアートに対する興味や関心、理解があり、そして何よりご自身が変化を創造する「野武士型パイオニア」だと自信を持って公言できる方に、ぜひ挑戦していただきたいです。そして、教育に関する経験はもちろんあった方がよいですが、幅広い分野でそれに類する経験を持っていれば歓迎します。
どんな領域であれ、新たな地平を切り開くビジネス経験を積んできた方や、今回のプロジェクトに強く共感し、前例のないチャレンジに全身全霊をかけて挑める方と、このプロジェクトをやり遂げたいと思っています。
予定調和では面白くない──。予測できない未来をつくり続ける
認定特定非営利活動法人グリーンバレー 理事/大南 信也
──神山町といえば、Sansanを含むIT企業をはじめ、映像、デザイン関連の企業15社以上のサテライトオフィスの誘致に成功し、外部からの移住や芸術家招聘(しょうへい)に積極的な町として知られています。そんな神山町の発展を、長きにわたってけん引してきたグリーンバレーの大南さんが神山町で課題に感じてきたことをお教えください。
神山町のテーマは「循環」です。人材流出が続き、移住者が乏しかったこの町に外から人を呼び込むためには、この土地でも仕事を生み出せる方、つまりアーティストやクリエーターを集めることが重要だと考えるようになりました。
世界中からクリエーターを集めるなかで、ありがたいことに「神山町に移住したい」という人が現れてきました。彼らの移住を支援しているうちに、人だけではなく企業を誘致するノウハウが自然と身につき、サテライトオフィス第1号としてSansanが神山町に来てくれました。
人や企業が集まれば、その周辺にまた新しいビジネスが生まれ、雇用が生まれ、その中で人材が循環し始める。それを繰り返してきた結果、少しずつですが注目を集める存在になってきたのかなと思います。
──神山町が発信している、クリエーティブに過疎化させる「創造的過疎」という考え方もユニークですよね。今でこそ多様な人が集う「せかいのかみやま」として知られる存在となっていますが、当初から今の形をイメージされていたのでしょうか。
いえ、私も含めて、神山町にいる誰もがイメージできていなかったでしょう。そして、予測できなかったからこそ、こんなに面白い「今」につながっているのだと改めて感じています。
神山町は人材や企業を誘致するには不利な条件が多くあります。光ファイバー網が整備されていたり、土地が安価だったりするのは、あくまでも枝葉でしかなく、デメリットすべてを払拭できるものではありません。
それでも、今こうしてメディアに注目していただき、魅力あふれる人材が集まる土地になっているのは、予定調和ではない化学反応をこの町全体が許容し、楽しんできたからこそではないでしょうか。
約20年ぶりの高専新設で、日本の高等教育に一石を投じる
──神山町で長く過ごしてきた大南さんから見て、今回の「神山まるごと高専」プロジェクトが果たす意義はどのようなものだとお考えですか。
まずお伝えしたいのは、このプロジェクトは神山町だけのものではなく、全国各地の高専や大学といった「既存の高等教育機関にも大きなインパクトを与えるのでは」と、日本中から期待されているものだということです。
日本国内で新たな高専が誕生するのは、実に約20年ぶり。カリキュラムや学業に対するアプローチも、寺田さんがおっしゃる通り、さまざまな面が現代版にアップデートされていきます。その一つが、近年注目を集めているアクティブラーニングを積極的に取り入れていくというもの。
また、神山まるごと高専は私立であるというのも注目すべき点です。既存の高専は、国立のものがほとんどであり、こうした冒険心豊富な教育カリキュラムを導入することが制度的に困難です。それが悪いということでは決してありませんが、この新しい高専は新しく変化を生み出す存在として、これまでにない選択肢を提供できると考えています。
──日本の教育という大きなスコープにも影響を与えうる「神山まるごと高専」プロジェクトを、大南さんはどんな方にリードしていただきたいと思いますか。
学生や教員、そして地域の人とフラットな関係を築ける。人間力があり、自分が間違っていた時にはそれをきちんと正すことができる自制心を併せ持つ。そして、多くの失敗を経てもなお、常に前向きでいられる。そんな人に来てほしいと思います。
もちろん、一人の人間にできることは限られています。なので、学校長一人で全てのことにあたる必要はありません。たとえばビジネス出身の方であれば教育や研究方面の方をチームに加えることになるでしょうし、逆もまた然りです。そういった仲間と、ともに全く新しい高専を創り上げることができる方をお待ちしています。
前例のない仕事というのは世の中に数多くあるかもしれませんが、ここまでやりがいのあるプロジェクトはそうないと確信しています。塗り絵のように輪郭があり、そこに色を乗せていく仕事ではなく、自ら真っ白なキャンバスに自ら大きさを決め、線を引き、鮮やかな色で作品を仕上げていく。この神山町に身を置き、「何年もの時間をかけるにふさわしい」と意気に感じてくれる方にぜひ来てほしいです。
教育のインプットを、自分の意志で「価値最大化」できる高専へ
株式会社電通 エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター/国見 昭仁
──プロボノとして「神山まるごと高専」のコンセプトワークを担当している国見さんですが、このプロジェクトに参画しようと決めた理由をお聞かせください。
何よりも、自分自身の経験によるところが大きかったですね。私が中学生の時は、受験をして進学校に進むことに違和感を覚えることはほとんどありませんでした。ですが、大学受験のタイミングで「なぜ自分は大学に行くのか」が分からず、自分自身に向き合う時間が長く続きました。
教育というものは、えてして受動的になりがちです。しかも、教育から得られたものをどう自分の血肉に変えていくか、そして人生をより良いものにするかまでは、学校は教えてくれません。
だからこそ、教育を受ける時点で、自分自身が目指す「北極星」がどの方角にあるのかを何度も探し、試行錯誤するという経験が必要だと考えていました。この思いを実現できるチャンスが、このプロジェクトにはあると感じたのです。
──「神山まるごと高専」の具体的なコンセプトをお教えください。また、そのなかでも国見さんが特に重視した要素があれば、ぜひ聞かせていただけますか。
教育界の方針でよく用いられるものに、「Head(知識)」、「Hands(技術)」、そして「Heart(意志、こころ)」という3つの要素があります。端的かつ見事に教育の重要な点を表現していると感じますが、私たちはここに「Foot(フィールドワーク)」という要素も加えました。
まず、知識はもちろん重要です。しかし、先ほど述べた通り、どの知識や技術を習得すべきかを判断する軸は自分自身。自分が目指したい方角を、自分の中にある北極星から見つけられる意志こそが大事だと考えています。だから最も大事なのは「Heart」であり、さらに言うと「My Heart」が不可欠なのだと思います。
自分が愛せる未来を、自分自身で切り開いていくことができるようになる。そのような考えから、「愛せる未来のつくり方学校」というコンセプトにしました。
──コンセプトに「Foot」という要素を加えたのには、どのような理由があったのでしょうか。
この20年間、インターネットの普及を皮切りに、人間の行動原理は「動く」から「動かない」に急激にシフトしました。以前は、本を買いに本屋に行き、学ぶために塾に行き、映画を見に映画館に行き、働くためにオフィスに行っていた。でもたったの20年で、本をネットで買い、ネットで学び、ネットで映画を見て、自宅で働くことができるようになった。「便利になった」という点では称賛すべき変化です。
しかし、ネット上に流通している知識だけをもとに考えて、社会に変化を起こせる人材になれるかというと、非常に難しいでしょう。分かりやすいほど机上の空論に陥りやすくなる。現場に足を運び、無条件に飛び込んでくる情報から受ける刺激は、既存の知識があったとしても、必ず未知の要素が含まれているものです。
既知と未知とのコラボレーション。ここにこそ、自分の意志と社会との懸け橋が生まれるのだと考えています。
「24時間365日5年間」という時間のすべてをデザインし尽くす
──今回のプロジェクトを通じて、国見さんはどういった世界観を実現しようとしているのでしょうか。
私自身、この神山から多くの刺激をいただきました。神山まるごと高専の学生の方々には、神山を歩き回り、多くの人と語り、たくさんのことを感じてほしいと考えています。
自分がはせている思いを人に話し、その人の表情から感じたことを振り返り、また自分の思いを高めていってほしい。そうした意志を大切にする仕組みも、学内のカリキュラムではないところでも取り入れていこうと考えています。
例えば、たき火をする場所をつくるということも考えています。たき火を囲んでいると、なぜか普段話せないことを口にできる気がしませんか。自分の夢を語り、人に共感され、人に否定され、喜び、涙する。そんな仕組みの一つがたき火です。
当然のことながら学びのコンテンツもとても大切ですが、学びの環境もまた大切です。だからこそ、友人と議論したり、考えを消化したりする場づくりも考えぬく必要がある。神山をまるごと学びのフィールドと捉えればこそ、私たちは学校の内外を問わず、そのすべてをデザインすることが求められているはずです。「まるごと」という言葉にはいろいろな意味を込めていますが、「24時間365日5年間」という時間をまるごと濃厚に過ごし、学び、成長してもらうための意味も持たせています。
──最後に、この記事を読んでいる皆さんに、メッセージをお願いします。
世の中の進化するスピードが上がっている時代だからこそ、学校や学生も進化し続ける有機体でなければいけません。未来を想像しながら学校を変革し続け、自ら変化を創造することができる学生を育てていく必要があります。そのためには、学校長の「未来を見据える能力」が不可欠だと思います。
実際に、「神山まるごと高専」が起動したら、学校現場をけん引するのは学校長です。学校長のマインドは、高専の成否を決める要因の一つになることは間違いありません。心の底から人が好きで、その可能性を信じられる方、そして人への思いを語り合うなかでお互いに高め合える方と出会えることを楽しみにしています。
募集職種
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次世代型高専「神山まるごと高専」学校長(高専経営メンバー)
※神山まるごと高専 設立準備委員会は、「神山まるごと高専」の設立を目指し集まった有志委員会です。 認定特定非営利活動法人グリーンバレー内に設置されています。 【募集背景】 2023年4月に開校する「神山まるごと高専」の教育現場の責任者として、カリキュラム開発といった開校の準備から、開校後は神山町の地で、本校が掲げるビジョンに向き合っていただける方を募集します。なお、教育に関する経験が豊富にある方はもとより、幅広い分野から豊かな社会経験や知見をお持ちの方の応募も歓迎します。 学校長は、教育現場の責任者として、学生、神山町の住民、教職員と向き合い、その他利害関係者と協力して、本校の掲げる「利己的に学び、利他的に実現する」という教育ビジョンを実現していただきます。また同時に、本校のビジョンなどの社会に向けた情報発信についても、先頭に立って活動して頂く予定です。 具体的には、学校長内定後、設立準備委員会の一員として、カリキュラムの開発や教職員の募集など、神山まるごと高専設立に関わる業務に携わっていただく予定です。開校後においては、目指すべき理想像の提示、教育課程(カリキュラム)の編成、教職員の統率、関連施設の管理監督、学生および協力者の確保、利害関係者への情報発信など、本校の教育現場に関わるすべてが業務対象です。 設立準備委員会としての開校準備から、一期生の卒業まで、約10年になるプロジェクトです。長期的に神山まるごと高専に携わり、自身の人生・キャリアの根幹に据えていただける方のご応募をお待ちしています。 【神山まるごと高専について】 神山まるごと高専は工業技術習得だけではなく、それを活用して社会に変化を生み出す力、起業家精神を持った人材を育てる「次世代型高専」です。どのような場・環境においても社会課題を見つけ、課題解決に向けて活動することができる、そして自らの手で変化を創造することができる、未来の「野武士型パイオニア」を育てる高専になります。テクノロジーやアート、デザインをツールとして学びながら、神山という町全体を実践の場としてとらえ、地域や多様な関係者と共に学びの場を作り上げます。 【仕事内容】 ・教育現場の責任者として、本校が掲げるビジョンを実現する ・教育課程の編成 ・教職員の統率 ・関連施設の管理監督 ・学生および協力者の確保 ・利害関係者への情報発信