東京都利島村役場

人口300人の村で教育行政のトップとして、島の未来をつくる
東京の都心部から南に約140km、伊豆諸島の北部に位置する東京都利島村(としまむら)では、教育行政を担う教育長を募集しています。人口300人、30人の児童生徒が生活する利島村では、少人数の利点を生かした柔軟な教育が行われてきました。子どもたち一人一人の自立を促し、将来の島の発展につなげるべく、利島ならではの教育行政を推進する醍醐味とは何か、村長の村山将人氏と現教育長の弟子丸知樹氏、小学校教員の池田莉都氏にお話を伺いました。
本ページの求人の募集は終了しました。
募集期間:2024年4月16日(火)〜 2024年5月13日(月)
本ページの求人は、「プレミアムステージ」をご利用でなくても、ビズリーチ会員であればどなたでも閲覧、応募が可能です。児童生徒30人に対し教員25人。質の高い少人数教育を実施
利島村長/村山 将人 ──はじめに、東京都利島村の概要や教育体制について教えてください。 東京都利島村は、伊豆諸島の北部に位置する一島一村の村です。周囲は約8km、面積は4.12平方キロメートルと小さな村ですが、美しい自然があり、天気のよい日にはたくさんの星が肉眼で見られます。東京からの移動時間は、竹芝港から高速船で約2時間半です。 人口は300人で、20~40代の約8割がIターンという、移住者の多い島です。児童生徒数は約30人で、人口に対する子どもの割合が多いのが特徴です。島内には小中一貫校である義務教育学校が1校あり、高校はありません。教職員は約25名在籍しており、少人数で質の高い授業が行われています。 ──利島村の課題と、島の教育に対する思いについてお聞かせください。 教育は、最も重視していきたい分野です。利島村には高校がないため、子どもたちは義務教育が終わると同時に親元を離れなくてはなりません。自分の身の回りのことがきちんとできたり、正しい金銭感覚を持ったりすることはもちろん、島の外の世界に出ても、島での経験を「強み」にしながら新しい友達ともしっかり関係を構築できるような、「自立」した大人になるために必要な成長が、島の子どもたちには、より早い段階で求められるのです。 この「15の春」を迎える子どもたちの高校進学を島全体でしっかりと応援していくため、2024年1月に「利島村『人づくりが島づくり』大綱」を発表しました。これは従来の教育大綱を、村民と話し合いながら改定したものです。 キーワードは「当事者」「自立」「一体感」。もともと利島村には「子どもは島の宝」という思いをもって、島全体で子どもたちと関わり育てていく文化もありますが、島民一人一人が自分ごととして教育を捉え、村の将来をつくっていく。村長としても2人の子どもを育てる親としても、そんな活力のある村づくりを、教育を通じて実現していきたいと考えています。
「15の春」に向けた自立支援に、島民全体で取り組む
──今回、ビズリーチを活用して教育長を公募する背景について教えてください。 現教育長の弟子丸さんは文部科学省からの出向者です。弟子丸さんは30歳、私自身は43歳という若さを生かして、新しい挑戦に取り組んできました。これからも前例にとらわれずこれまでの成果をさらに進化・発展させるためには、「この仕事をぜひやってみたい」という熱量を持つ方に次の教育長をお願いするのがよいと考えました。 教育長という責任の重さからも、移住を伴うことからも、このポジションを選ぶことにハードルを感じる方は多いかもしれません。しかし、自治体の教育行政のトップに立ち、島の未来を自らの手で切り開いていく機会は大変貴重なものです。島民全員で島の未来を「自分の力で変えていきたい」という思いを持つ方のご応募をお待ちしています。
島の教育が変われば、島の未来が変わる。教育長の幅広い役割
利島村教育長/弟子丸 知樹 ──弟子丸さんは文部科学省で教育DXを担当した後、2022年10月から利島村教育委員会の教育長に着任されたそうですが、教育長としてこれまでにどのような取り組みをしてきましたか。 教育長としての仕事には、大きく分けると「島の人たちの意識に働きかける側面」と「教育の仕組みを整える構造化の側面」の2つがあると捉えています。 前者の「島の人の意識に働きかける側面」は、保護者や教師が島の教育について話し合う場を設けたり、外部から専門家を招いたりして、「島だからこそできる教育」について考える機会をつくりました。島の「へき地教育」は、以前は「恵まれていない」という捉え方もありました。しかし、小規模な学校で、島の自然や文化、社会に触れ、密な地域コミュニティのなかで学べるこの環境には、これからの学校教育に必要な要素が全てそろっています。そこで、へき地教育の専門家をお呼びして「個別最適な学びが求められる令和の時代において、へき地教育は最先端教育である」という内容の講演やワークショップ等を行いました。教職員・保護者・地域住民の島の教育への意識はポジティブなものに変わりつつあります。 後者の「教育の仕組みを整える構造化の側面」では、小学校6年間・中学校3年間の教育を一貫して行う9年制の「義務教育学校」への移行を行い、今年度4月から開校しています。すでに同じ建物のなかに小中学校が併設されている状態だったので、両者を連携しやすくすることによって教育の幅が広がったり、重複していた事務作業が削減できたりする効果が見込めると考えました。 さらに、教員が意欲的に自己研鑽できる「教師が育つ利島」の実現を目指しています。「島ならでは」の学校教育を通して、子どもたちに利島のよさと課題を認識してもらい、実際に利島をよくする経験をたくさんしてほしいと願っていますが、その前提として、教員にとって新たな教育活動にチャレンジしやすい環境が必要です。意欲的な教員にとって「選ばれる島」になる必要があります。島に来る教員に対する対外的な情報発信、島にいる教員が利島を知る機会の充実、最新の教育について学べる機会の確保など、さまざまな取り組みを行っています。 ──今回募集する「教育長」に期待する役割について教えてください。 まずは、「義務教育学校への移行後の対応」です。今年度も、島民を巻き込んだカリキュラム作りなどを行う予定ですが、義務教育学校の強みをフル活用し、島内の皆さんが「学校の形が変わってよかった」と認識し、効果を実感できるフェーズまで進めていただきたいと思います。 次に、この義務教育学校を踏まえた校舎建て替えです。校舎が老朽化し、毎年相当な額の教育予算が修繕費に使われています。島の学校校舎は島民全てにとっての学びの核となる施設ですので、そのような校舎の実現に尽力いただきたいと考えています。 いずれも、島の将来の発展・存続を考えるうえでも重要な取り組みだと考えています。魅力的な教育環境が整備されれば、若い人たちが集まりやすくなり、島の将来的な発展にもつながるためです。 着任後のフォローとして、私の任期中にできるだけ並走期間を設ける予定です。業務の引き継ぎや来年度の方向性のすり合わせ、移住に伴う生活面のサポートも行いたいと考えています。
「目指す社会」を教育から実現する醍醐味
──「利島村の教育長」という仕事の魅力、やりがいは、どのような点でしょうか。 一番の魅力は、裁量の大きさです。自分自身が島民として暮らすなかで、見聞きしたことをもとに島に必要なことを考え、施策を具体化・実行できます。子どもたちや島の人たちの反応をダイレクトに見られるのは、利島の教育長ならではです。教育行政の重要事項は村長・副村長・教育長の「島の三役」や利島小中学校の管理職と話し合って、スピーディーに意思決定を行っていきます。 また、教育長というポジションだからこそ、さまざまな人とのつながりが得られるのも魅力です。東京都庁などへの出張も多く、各自治体の教育長が集うフォーマルな教育長会からインフォーマルな勉強会・オンラインコミュニティーまで、同じ悩みを抱える人と対話し、刺激をもらえます。私は、「義務教育学校」への移行について、他島の教育長や校長先生から「勇気をもらった。自分の自治体でも早速挑戦したい」と言っていただき、大きなやりがいを感じました。 島で暮らすことに不安を感じる方は多いかもしれませんが、不便さはあまり気になりません。ネットで注文した商品も普通に届きます。私は会社員である妻と一緒に東京から移住していますが、妻はリモートワークで仕事を行い、土日は一緒に島内のサークル活動を楽しんでいます。 ──どのようなマインドや経験を持つ方が活躍できると思いますか。 利島で行う教育施策には複数の正解があったり、正解がそもそも無かったりするので、方針を示すだけでなく島の人たちと一緒に汗をかいて頑張れることが大切だと思います。特に重要なのは教育大綱でも書いた「自燃性(じねんせい)」です。島の課題を自分ごととして捉えることは前提ですが、さらに自分自身で焚きつけて、周囲の人を巻き込む力が必要です。 行政や教育に関する職務経験も生かせる場面が多いと感じますが、利島村で教育改革を推進していくためにより重要なのは、先ほど述べたようなマインドと、行政・民間企業を問わず、多くのステークホルダーとプロジェクトを推進した経験だと考えています。 そして教育長の立場として、島の課題を俯瞰して構造を捉えることと、島の人たちのなかに入りこんで改善策を実行していくことの両方が必要です。そのため、組織の内側と外側両方の視点を持ちながら課題解決する力が身につきます。小規模とはいえ、自治体の教育行政のトップを担うことによって得られる経験は、他では得られないものばかりです。教育を通じて島づくりに貢献できるポジションですので、「こんな世の中にしたい」という思いを持つ方の応募をお待ちしています。
少人数だからできる「子ども主体の学級づくり」
利島小中学校教員/池田 莉都 ──池田先生は2023年4月から利島小中学校に赴任されたそうですが、着任の経緯を教えてください。 以前は東京都墨田区の公立小学校に4年間勤務しており、利島には公募制度を通じて着任しました。もともと島で行われる教育に興味があり、さまざまな島の説明会に参加するなかで、利島村には「やりたいことができる環境がある」と思ったことが応募の決め手です。 利島村の先生たちは「授業では新しいことにどんどんチャレンジしましょう」と言ってくれました。実際、私は専門が理科なので、理科の研究を続けたい旨を伝えると「出張は全く構わないし、学んだことを授業に還元してほしい」と、後押ししてくれました。教員数が限られているなかで、教師に対してこれほど寛容かつ応援の姿勢を示してくれることに驚き、ここで働きたいと思いました。 ──池田先生が感じる、利島村の教育環境の特徴は何でしょうか。 「子ども主体の学級づくり」がしやすい点だと思います。私は令和5年度に小学4年生の学級を担当していて、児童は4人です。少人数ゆえに一人一人の顔が見えるので、子どもに合わせた授業をしやすい環境があります。例えば理科の実験では、子どもたちが実験計画の立案までチャレンジできそうだと思ったら、児童の実態に合わせて最後まで取り組めるよう、授業計画を立て直すことができます。 また子どもの意見が出てきやすく、それに合わせた柔軟な運用ができるのも少人数のメリットです。例えば以前、子どもたちから「習い事で忙しい日とそうでない日があるので、宿題は1週間分まとめて出してほしい」という意見が出たときは、実際にそのような運用に変えて計画的な自宅学習に挑戦してもらいました。 さらに、機動的な校外学習がしやすいのも利島の利点です。一学年に複数のクラスがあると、足並みをそろえる必要がありますし、クラス全員が体験できるだけの環境を整える必要があります。しかし利島村では、アポイントさえ取れればすぐに学外に出かけられます。村の方たちや役場の方たちも協力的なので、必要なときに必要な場所で学びを深められます。
やりたいことに挑戦できる、「型にはまらない教育」が魅力
──今年度から「義務教育学校」としてスタートします。どういったことに取り組みたいと考えていますか。 全く新しい学校を作っていくような取り組みだと思っているので、とてもワクワクしています。墨田区の学校に勤務していたときは、近隣の中学校との関わりはありましたが部分的でした。既に利島村では小学生と中学生が同じ校舎で過ごしていますが、今後は教育方針や事務的な業務もシームレスになっていくため、さらにいい影響を及ぼし合えるのではないかと思います。もちろん中学校と小学校では授業のやり方など異なる点はありますが、お互いに擦り合わせつつ、新しい教育の形を模索していきたいです。 ちなみに教育大綱の見直しの際は、私も教員として意見交換会に参加させてもらいました。他の自治体では、教育大綱の内容に教員が関われる機会はほとんどないと思いますので、全教員の意見を広く聞いてもらえる場のある環境はとてもいいなと思いました。実際、教育委員会や役場は学校教員との距離感が近く、子どもたちの発表活動を含めてあらゆる面でサポートをしてもらえるので心強いです。 ──最後に、記事をご覧の方にメッセージをお願いします。 私は教員として、授業や日常の生活に「いかに子どもたちのやりたいことを組み込むか」を意識してきました。その結果、成功すれば成長を実感できますし、失敗してもまた頑張ろうと思えるからです。だからこそ「型にはまらない」教育ができる利島の環境はとても魅力的で、可能性にあふれていると感じます。 あたたかくて純粋な利島村の子どもたちが、子ども時代を楽しく過ごしつつ、自立した状態で「15の春」を迎えられるように、島の良さを生かしたよりよい教育をこれからも目指していきたいと思います。ぜひ、共に利島の未来をつくっていきましょう。
募集職種
- 教育長|人口300人の東京都の離島で教育改革を推進
経営者・CEO・COO等事業企画・事業統括
東京都
【募集背景】 東京都の竹芝エリアから高速船で約3時間程の距離に位置する離島・利島村(としまむら)で、「全国最年少教育長」の後任として、教育改革を更に進めていただきます。 「教育長」とは、各市町村に設置される教育委員会の代表者です。学校教育から地域の生涯学習、文化・スポーツ振興まで幅広く責任を担い、島づくりを「人づくり」の面から担う責任者です。 <利島村の教育環境> 利島村は、人口300人と全国でも3番目に人口の少ない自治体で、児童生徒は約30名おり、義務教育学校(※小学校と中学校の教育を一貫して行う学校)が1校あります。 島内に高校がないことから、子供たちの「15の春」の自立に向けた教育を、学校・地域全体で行っています。 離島は"へき地"として教育環境が整っていないイメージを持たれることもありますが、人数が少ないからこそ、むしろ東京都内・全国でも最先端の個別最適な教育を実現できる環境でもあります。 教育委員会と学校との距離が近く、子供たちや関係者の顔を直接見る機会が多いこと、また手触り感のある取組みを企画立案から実行まで担うことができるのも、本ポジションの魅力です。 今年の1月には、多くの方と議論を重ねながら、新たな教育大綱として「“人づくりが島づくり”大綱」を公表しました。 このなかで、「一人ひとりが自燃性を発揮し、村の将来を創る『自立した当事者』として活躍する『一体感のある島』利島」と示していますが、この実現に向けて、教育長自身も体現しながら、教育改革に取り組んでいただくことを期待しています。 【業務内容】 利島村では近年、新しい教育大綱の公表、利島小中学校の義務教育学校への移行(2024年4月より移行)、新しい校舎の基本計画づくりなど、教育改革を進めています。 後任の教育長には、以下のような業務に取り組み、教育改革を島民が「実感できる」フェーズにまで持って行っていただきます。 ・義務教育学校の強みを生かした、島ならではの学校づくり ・利島小中学校の校舎建て替え ・教職員が意欲的に研鑽できる「教師が育つ利島」の実現 ・島民が当事者意識を育みながら成長できる生涯学習の取組 ・島民の一体感を醸成するためのイベント・行事の企画と実施 また教育長として、村議会での答弁や教員人事のための調整業務なども実施いただきます。 ※業務上の連携者:村長・副村長・村議会議員、村役場の職員、村内の学校の校長・教職員、住民(児童生徒の保護者など含む)、東京都や他島の教育委員会事務局 など 【受入体制】 ・利島村郷土資料館内の教育委員会事務室で、教育委員会事務局職員(2名)とともに勤務いただきます。 少人数の体制で業務を行うため、組織マネジメントだけでなく、資料作成や下調べとしての調査など事務作業を自ら行っていただく場面も多くあります。 ・現教育長は任期満了までの数ヶ月、伴走しながら引き継ぎを行い、新教育長のサポートを行う予定です。行政としての考え方や物事の進め方は、この伴走期間の中でもフォローいたします。 【選考フロー】 ・第1次選考:書類選考(ビズリーチに登録している職務経歴書の記載内容に基づき審査します) ・第2次選考:オンライン面接(2024年5月中予定) ・第3次選考:対面面接(2024年5〜7月中予定、島にお越しいただくため日程は柔軟に調整します) ・内定通知 ※着任予定日:2024年10月1日~冬頃を想定(具体的な着任時期は、2次選考以降において、村長・現教育長と調整することになります。) ※着任当初は、「教育次長」として就任いただく予定です。 教育長の任命には、利島村議会の同意が必要となります。詳細は面接時にお話しいたします。