公益財団法人日本財団

瀬戸内海の海洋ごみ問題に挑む、プロジェクト推進リーダーを募集
日本財団が、瀬戸内海に面する4県と共同で推進している包括的海洋ごみ対策プロジェクト「瀬戸内オーシャンズX」。調査研究の結果を踏まえ、各種プロジェクトの実行フェーズを迎えた今、プロジェクト推進マネージャーの募集を行います。世界的にも注目される同プロジェクトの活動内容や意義について、常務理事の海野氏と現在プロジェクトリーダーを務める塩入氏にお話を伺いました。
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募集期間:2024年6月25日(火)〜 2024年7月22日(月)
本ページの求人は、「プレミアムステージ」をご利用でなくても、ビズリーチ会員であればどなたでも閲覧、応募が可能です。世界共通の社会課題である「海洋ごみ問題」の解決モデルをつくる
常務理事/海野 光行 ──日本財団が海洋問題の解決や海を守る活動に注力している理由を教えてください。 日本財団は、日本国内や世界に山積している社会課題の解決を目的として、さまざまな活動を行っています。多様な社会課題があるなかでも、人類の喫緊の課題となっているのが地球環境問題です。 地球の表面積の7割を占める海洋は、地球環境問題にもっとも影響を与え、かつ影響を受けるものとして、環境問題解決に向けた国際会議のなかでも議題の中心に挙げられています。こうした背景から、豊かで美しい海を次世代につないでいくために、日本財団としても海洋に関連する社会課題の解決に注力しています。 ──日本財団が発足させた「瀬戸内オーシャンズX」とは、どのようなプロジェクトですか。 瀬戸内オーシャンズXは、瀬戸内海への新たなごみの流入を70%減らし、ごみの回収量を10%以上増やすことを目標とした、包括的海洋ごみ対策プロジェクトです。2020年12月に、岡山、広島、香川、愛媛の瀬戸内4県と協定を締結して発足しました。 閉鎖性海域という特徴がある瀬戸内海は、外海からのごみの流入が少なく、効果を可視化しやすいという理由から、瀬戸内海を対象にプロジェクトを発足しました。4県の自治体と連携しつつ、漁業や農業土木などの専門的なスキルや知識を有する市民と協力しながら、瀬戸内海のごみを減らすための活動を行っています。 ──瀬戸内オーシャンズXでは、これまでにどのような取り組みを行ってきましたか。 「調査研究」「企業・地域連携」「啓発・教育・行動」「政策形成」を4つの柱として、瀬戸内海の海洋ごみ対策を進めてきました。ステークホルダーを巻き込みながらプロジェクトを推進するためにも、効果を測るうえでも、エビデンスデータが重要だからこそ、これまでの3年間は調査研究に特に注力してきました。 たとえば、海洋ごみの多くは水路や河川を伝って陸から海に流れ出るため、河川などの流域2万地点以上で調査を行い、ごみがたまりやすい「ホットスポット」を特定しました。また、水中ドローンを用いて海底ごみの状況を調査したほか、漁業共同組合の協力を得て海岸にごみとして流れ着きやすい養殖用のフロートにICタグを埋め込み、ごみの動きを調査するなどの活動もしています。 こうした取り組みを通して、ごみの発生量や発生要因を調べることで、どのような活動に費用と時間を投下すれば効率的にごみ対策ができるのかも明らかになってきています。また、科学者と市民が協力してプロジェクトを進める「シチズンサイエンス」も重視していて、累計12万人以上の協力を仰ぎながら活動を行ってきました。
これからは、調査研究で得たデータを活動や政策形成に生かすフェーズ
──プロジェクトの開始から4年目を迎えた現状と、今後の取り組みの展望について教えてください。 瀬戸内オーシャンズXでは、清掃活動なども積極的に行った結果、1年間あたり26トンの海洋ごみを回収しました。しかし、調査結果から、目標値を達成するためには毎年さらに60トンの回収が必要だとわかったため、当初は5年間だったプロジェクト期間を3年間延長して、2027年度まで実施することにしました。 これまでの調査のなかで、河川と水路の多い岡山県では海に近い河口部にごみが集中することや、広島県では漁業由来のごみが多いことなど、各県独自の特徴があることもわかってきています。 今後はそうした調査結果を元に、各自治体の政策形成に生かしていただくための働きかけも重要になります。また、効率的なごみの回収方法を考え、担い手を育成する活動と並行して、ごみの発生を抑制したり、資源を循環させたりするための取り組みにも、引き続き注力していく予定です。 ──瀬戸内オーシャンズXとして、どのようなビジョンを見据えていますか。 世界には、瀬戸内海と同じような閉鎖性海域や、同じくごみ問題に悩んでいる島国が多くあるため、この取り組みが成功したら、モデルケースとして世界に輸出できると考えています。世界の海を瀬戸内海から変えていき、将来的には日本が海洋問題や環境問題解決の先進国として世界をリードできる存在になることを目標としています。 ──この記事をご覧の方に、メッセージをお願いいたします。 プロジェクトにおいては、各関係者との連携が重要です。われわれ日本財団の職員は、関係者の思いをくみ取りながら、結節点となってプロジェクトを推進していく役割を担います。ときには苦労もありますが、一つ一つ対話を積み重ねていくことによって、プロジェクトが前進する場面に多く出会えるでしょう。 人と話すことが好きで、社会課題の解決に携わりたいという思いをお持ちの方は、ぜひ参画していただきたいです。ご応募をお待ちしています。
「カギとなるのは連携」。日本財団の強みを武器に課題解決を推進
瀬戸内オーシャンズX プロジェクトリーダー/塩入 同 ──塩入さんはこれまでに瀬戸内オーシャンズXの多くのプロジェクトを主導してこられたそうですが、印象的だったプロジェクトはありますか。 岡山県岡山市と愛媛県宇和島市の中学生を対象としたプログラムが印象に残っています。生徒が互いの市を行き来して、ごみが生まれる現場を視察し、地域ごとのごみの特性の違いを学んでもらうというものでした。 岡山市では用水路から流れ出る生活ごみが大半を占める一方で、養殖が盛んな宇和島市では、養殖用フロートなどの漁具が摩耗して海岸や島に多く流れ着き、海洋ごみとなっているという特徴があります。 こうした違いを知ってもらうことで、瀬戸内海のごみへの理解を深め、解決策を考えてもらうきっかけになればという思いで実施しました。プログラムの実施にあたっては、それぞれの地域で環境学習を手掛ける団体に協力を仰いだことで、環境団体の方たちにも、各地域のごみ問題への理解を深めていただくことができました。 また、「中学生の学習機会」というフックを作ることで、一般的には地域を越えての活動が難しい、自治体職員や学校の先生のような公務員の方も巻き込んだ取り組みができたことも大きな成果でした。 ──今後は、どのような活動を予定していますか。 2025年の夏には、活動の1つの「山場」として、4県が連携した大規模な清掃活動を予定しています。また、海洋ごみ問題を解決した先には、瀬戸内海のブランド力や安全性の向上も支援したいと考えています。たとえば、瀬戸内海の中央部に燧灘(ひうちなだ)という海域があります。漁業が盛んな海域だからこそ、燧灘の漁獲物をブランド化して、適切な価格で販売できるようにしたいと考えています。 また、燧灘はクルーズ船の航路としても人気を博しているので、海洋ごみ問題をきっかけとして、多様な面から次世代に豊かな海を引き継ぐための活動を支援できることは、日本財団の特徴かもしれません。 ──今回募集を行う、プロジェクト推進マネージャーに期待する役割を教えてください。 現在、日本財団からは13名ほどが瀬戸内オーシャンズXに携わっていて、そのうち10名は東京拠点で、3名は香川県庁にある瀬戸内拠点で働いています。プロジェクト推進マネージャーの方には、大小数多く走っているプロジェクトのマネジメントに加えて、瀬戸内拠点のマネジメントを担っていただきたいと考えています。 Webミーティングなどを活用し、拠点間で相談できる機会は日常的にありますし、これまで瀬戸内で関係者との意思疎通を図ってきた私も、東京を拠点にしつつ出張もしながらサポートを行うので、安心して業務に慣れていただけると思います。
関係者の立場に立つ姿勢と、俯瞰して課題を捉える視点が必要
──瀬戸内オーシャンズXのプロジェクト推進リーダーとして活躍するためには、どのような資質が必要ですか。 私たちは、漁業協同組合や農業協同組合、県庁や市役所の各部など、多岐にわたる組織のメンバーを巻き込みながらプロジェクトを推進する必要性があります。だからこそ、それぞれの組織の特性や意向を把握したうえで、相手の立場に立って物事を考える姿勢が重要です。 それに加えて、日本財団の職員として一歩引いた立場から俯瞰して、課題解決のための道筋を立てる能力も必要となるでしょう。 ──さまざまな視点に立ちながら、プロジェクトを推進したエピソードはありますか。 広島県のとある漁業協同組合長さんに対して、取り組みへの協力を持ち掛けた際に「協力したいけれど、県全体の養殖産業に影響を与えてしまうことだから決断しづらい」と躊躇されたことがありました。 そこで、県内の他の漁業協同組合長さんにあらかじめ相談を持ち掛け、取り組みの意義や解決すべき課題の重要性を説明し、県内の漁業協同組合が一体となって取り組みを進めることができました。現場に踏み込んで地道に交渉を行いながら、ハブ役となって課題解決を推進する力の大切さを改めて感じたシーンでした。 ──この記事をご覧の方に、メッセージをお願いいたします。 この3年間、私は香川で暮らしつつ、岡山や愛媛、広島など各地に出張し、さまざまな人を巻き込みながらプロジェクトを推進してきました。住環境は都心部と大きくは変わりませんし、生活で不自由を感じることはなかったです。 この活動をしていると地元の子どもたちと触れ合う機会が多く、そこから新しい気付きを得たり、住民の方から応援の言葉をいただいたりと、本当にありがたいなと感じます。お世話になった方々のためにも、美しい瀬戸内の海を未来に残していきたいです。 これまでの3年間は調査に注力し、課題を発掘し、課題解決のための計画を立てる段階までは達しました。そして今後問われるのは、実現のためのアプローチ方法を柔軟に考え、行動を起こしていく実行力です。 特定の技術や画一的なスキルだけで解決できるものではないからこそ、「人との関わりや連携によって、課題を解決したい」というマインドをお持ちの方にぜひ参画していただきたいです。日本財団の組織力やネットワークを活用しながら、一緒に社会課題の解決にチャレンジしてみませんか。
募集職種
- プロジェクト推進マネージャー【瀬戸内4県と海洋ごみ問題解決に挑むオーシャンズXプロジェクト】
事業企画・事業統括新規事業企画・事業開発
香川県
【募集背景】 日本財団は瀬戸内海の海洋ごみの年間総流入量4,500トンを5年かけて減少に転じさせることを目的に、2020年12月に瀬戸内4県(岡山、広島、香川、愛媛)と連携した包括的海洋ごみ対策プロジェクト「日本財団・瀬戸内オーシャンズX」を発足しました。 効果の測定がしやすい閉鎖性海域で地域を巻き込んだ海洋ごみ削減の成功モデルをつくり、「瀬戸内モデル」として世界に発信したいという目標があります。発足から4年で様々な調査研究や産学官民、地域の関係者との連携により具体的な海洋ごみ削減目標(86トン/年)と各県の実態を捕まえた上での課題が見えてきました。本年4月に、事業期間を3年延長し2028年3月までとすることを決定し、ここまでに見えてきた課題にリソースを集中投下し解決するフェーズに入っていく予定です。 今後の見通しとして、 (1)数値目標(86トン/年)を達成するために何が必要かを逆算し、各県毎にリソースを集中投下 (2)瀬戸内4県横断で海洋ごみ削減イベントを実施(2025年夏頃予定) などを実行していく方針です。 上記含め本プロジェクトを推進するプロジェクトマネージャー(主に瀬戸内エリアのステークホルダーとの連携)を募集いたします。社会課題を本気で解決する、そのために多くの方と協働しながら進めていく覚悟と想いを持った方からのご応募を期待しております。 【業務内容】 香川オフィス(香川県庁内)に駐在し、4県の自治体、漁業・農業関係者や自治会、地場企業、学校、地域の子供たちなど多くのステークホルダーと連携をしながらプロジェクトの進行をしていただきます。エビデンスに基づく海洋ごみ問題解決に向けた具体的な対策を、行政や企業の既存の枠組みを超えて推進していくための支援を行っていただきます。 <具体的な業務内容> 本プロジェクトは大きく4つのステップに分かれております。 ■調査研究・・・データ収集とエビデンスに基づく対策を立案し展開できる体制を整える ■企業・地域連携・・・エビデンスをもとに企業間、企業と地域の連携体制を構築し、具体的な対策を実行可能な枠組みをつくる ■啓発・教育・行動・・・体験を伴う啓発を展開し、自治体、企業、教育現場などを巻き込み海洋ごみ削減に向けた行動を創出する ■政策形成・・・各行政主体や産業の課題の実像を捉え、縦割りの弊害を克服するための制度運用の深化を図る 上記それぞれのステップを推進・マネジメントしていただきます。 <体制> 香川オフィスに2名、東京オフィスに8名程度のメンバーがいますので協力しながら業務を行っていただきます。 入社後は現任が一緒に関係先の地域や企業との打ち合わせに同行するなどサポートしていく予定です。 【当ポジションの魅力】 ・地域の皆さんと共に日本財団の持つネットワークを最大限活用しながら大きな社会課題解決に携われること ・日本・世界の海洋問題解決のモデルケースとなるほどの影響力の大きいプロジェクトであること 【日本財団について】 当社は、日本最大規模の財団法人です。市民、企業、NPO、政府、国際機関など様々な立場の人々と国境や分野を超えて連携し、「みんなが、みんなを支える社会」の実現を目指しています。 ボートレースの売上金の一部を財源とする年間800億円以上の資金をもとに、公益事業に携わる国内外のNPOやボランティア団体、企業を支援。活動範囲は世界117カ国に及び、分野は、社会福祉・教育・文化・船舶・海洋・国際協力援助など、多岐にわたります。