独立行政法人国立高等専門学校機構

世界に通用する高専に必要な「民間副業先生」の実践経験
日本の産業の発展と地域活性化を担う技術者の育成を目的として発足した国立高等専門学校。全国51校を取りまとめる国立高等専門学校機構では、急激な社会情勢の変化を捉えて次代を牽引する人財を輩出すべく、教育改革を進めています。その一環が、現場での生きた経験を学生に伝える「民間副業先生」の導入です。今回、高知工業高等専門学校で初めて民間副業先生を受け入れるにあたり、ともに実現したい未来や期待する役割などについて、この改革の最前線にいる3名のキーパーソンにお話を伺いました。
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募集期間:2021年7月20日(火)〜 2021年8月16日(月)
本ページの求人は、「プレミアムステージ」をご利用でなくても、ビズリーチ会員であればどなたでも閲覧、応募が可能です。伸びしろにあふれる高専生のポテンシャルをどう引き出すか
独立行政法人国立高等専門学校機構 理事長/谷口 功 ──はじめに、国立高等専門学校機構(以下、国立高専機構)のミッションと役割から教えてください。 国立高等専門学校(以下、高専)は、日本の産業を発展させる実践的技術者を養成する高等教育機関として、1962年に設立されました。同時に地域産業の発展を担う役割も期待されていたことから、地方都市を中心に開校が進み、現在では全国51校の高専が存在しています。 そして、それまで国が直接管理していた51校を取りまとめ運営する役割を担い、2004年に設立されたのが、私たち国立高専機構です。地域の発展を支える各校の自主性を尊重しながら、全国の高専の教育の質を担保し、さらに高めていくための取り組みを行っています。 高専は、これまで多くの優秀な人財を輩出してきました。実際に、社会インフラといっても過言ではないITプラットフォームなど、卒業生が世の中に提供してきた価値は計りしれません。一方で、変化が激しい現代においては、社会が求める人財も刻々と変わっています。そこで私たちは、新しいテクノロジーや技術を活用しながら時代に即した新たな価値を創出できるイノベーター、人を幸せにし、社会を健康に導く「社会のお医者さん」となるような人財を育成したいと考えています。 ──今回、民間副業先生の受け入れを決められた背景を教えてください。 設立以来の目的である「社会貢献・社会実装に寄与する人財の輩出」をひたむきに追求し、高専は一定の成功を収めてきました。しかし、今までのやり方に甘んじていてはいけません。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、オンラインでの遠隔授業が急速に普及したように、デジタル化に代表されるような高専の外の時流も的確に捉え、「高専がこれからの日本の教育をリードする」という気概を持って、自ら変わっていく必要があるのです。 さまざまな技術やアイデアを組み合わせてものづくりを行ってきた高専は、データサイエンスなどの新しいテクノロジーを取り入れるノウハウも、現状から変わる力も、持ち合わせています。来年、高専制度ができてから60周年を迎える節目の年に、「世界で通用する高度な高専」として次のステップへと進むためには、「今」を正しく学生に伝えていただける外部人財の力が不可欠です。そこで、民間副業先生の公募を決めました。 ──民間副業先生を受け入れることで、どのような化学反応を期待されているのでしょうか。 端的にいえば、あらゆる側面において新しい風を吹き込んでいただきたいですね。民間企業で経験されてきたプロジェクトや技術などのリアルな声を、学生にはもちろん、教育現場にも届けていただきたいと思います。また、民間副業先生には、学生に何かを教えるという一方的な立場ではなく、学生が新しいものを発想したり作ったりするのを手助けし、一緒に実現していくような新しい教育のあり方を作っていただくことも期待しています。 私自身、学生に「成功に甘えてはならない、成功は失敗のもとと心得よ」と伝えてきました。高専の根幹にあるのは、どうすればできるかを考え、実行し続けるチャレンジ精神です。結果はどうであれ、新しいことに挑戦してきたという事実が、人や組織、そして世の中を輝かせるのではないかと考えています。 高専が挑戦の場であり続けるためにも、民間副業先生の方には成功体験に限らず、チャレンジしたものの失敗してしまった生々しい経験も含めて、未来を生きる学生に伝えていただきたいですね。そして、彼らがこれからの世界を変えていけるよう、その力を存分に引き出していただければと思います。
セキュリティ人財の育成は、社会からも求められている
高知工業高等専門学校 校長/井瀬 潔 ──今回、セキュリティ分野で民間副業先生を受け入れることを国立高専機構が決めた際に、高知工業高等専門学校(以下、高知高専)が手を挙げられた理由やそこに込められた思いについて教えてください。 私たち高知高専は、「考える力があり、話す力のあるハイブリッドな人財の育成」を目指し、学生が社会課題の解決策を考えるグループワークなどを行い、社会実装教育に取り組んできました。また、他の高専にはない独自の「情報セキュリティコース」を開設するなど、情報セキュリティ人財の育成にも注力してきました。 2016年には国立高専機構が中心となって、サイバーセキュリティ人材育成事業「K-SEC」が立ち上がりました。その目的は、専門人財の育成と、学科に関係なくすべての卒業生にセキュリティの基礎を身に付けてもらうというものでした。 「K-SEC」の推進にあたっては、全国51校を5つのブロックに分け、各ブロックに拠点校が置かれました。すでにセキュリティ教育を先行して行っていた高知高専は、その中核拠点となり、「K-SEC」実践校の取りまとめ役を担っています。セキュリティ先進校として、セキュリティのスペシャリストを育てつつ、学生に広くセキュリティの現場感を知ってもらうためには、その最前線で活躍する民間のセキュリティ人財の知見が必要だと感じ、セキュリティ分野の民間副業先生を招くことを決めました。 ──今回、民間副業先生にはどのような期待を寄せているのでしょうか。 実は高知高専では、過去にも外部人財の活用を行っていました。しかし企業のCSRの一環で講義をしていただく方が多く、セキュリティマインドの醸成にとどまるケースが大半でした。 もちろん、学生のセキュリティに対する意識を高めることは大切ですが、それ以上に私たちが求めているのは、現場での事例や経験です。教員が教えられる学術的な基礎の部分ではなく、現場でしかわからない実践的な部分を、ぜひ民間企業の方に教えていただきたいと思っています。 また、最近はセキュリティに関わる職種や企業が多岐にわたり、私たちもそのすべてを把握できているとはいえません。そのため、学生のキャリア指導に生きる、具体的な最新の職種や周辺状況の情報なども教えていただければと思っています。「セキュリティを学ぶなら高知高専」といったブランドを確立し、全国の学生にその知見を展開できるような存在になるために、皆さんが培ってきた経験やスキルをぜひ共有していただきたいのです。
──高知高専で民間副業先生を務めることによって感じられる醍醐味、やりがいはどのようなものだと思われますか。 私たちは、人類の英知といっても過言ではない技術の基礎を学生に教えることに喜びを感じていますが、皆さんにも学生に教え、彼らが変わっていくときの達成感やうれしさを実感していただければと思います。また、セキュリティ人財の輩出は、あらゆる企業の危機管理能力を高めることにつながるなど、社会的に大きな意義があるため、その一端を担うやりがいも感じられるでしょう。 本校には情報セキュリティコースに関心を持って入学してくる学生が多く、社会で何が起こっているのか、実際のセキュリティの現場はどのように運用されているのかなど、リアルな話を前のめりになって聞く姿勢があります。彼らが将来について考える機会に立ち会い、キャリアプランの後押しもできる仕事なので、意欲がある方はぜひ応募していただければと思います。
伝えたいという純粋な思いが、人や地域を変える
高知工業高等専門学校 教授/岸本 誠一 ──今回募集する「民間副業先生」と「地域コーディネーター」の具体的な仕事内容について教えてください。 民間副業先生については、本校の「情報セキュリティコース」の5年生に向けた授業を計5回ほど担当していただきます。授業は基本的にオンラインで実施しますが、可能であれば1、2回は高知に来ていただいて直接学生に語りかけていただけたらうれしいですね。 期間としては2021年11月から2022年1月までの間を想定しており、「情報セキュリティマネジメント」といったネットワークのセキュリティソフトの管理や運用について学ぶ通常の授業に組み込む形で、皆さんが現場で実際に経験された問題やその対応策など、リアルな話をしていただければと思います。 カリキュラムについては、私や担当教員と一緒にミーティングを重ね、皆さんの貴重な体験を体系的に説明できるような設計をしていくつもりです。授業の内容によっては、お一人で講義していただくのではなく、教員とペアで授業を行っていただく可能性もあります。 地域コーディネーターは、現在、経済産業省が中心となって作ろうとしている地域セキュリティコミュニティに「学区」という立場から携わり、地域の企業や住民にセキュリティの重要性や技術を伝えるポジションです。民間副業先生と異なり、現時点では決まったやり方がなく、さまざまな人を巻き込みながら進めていく仕事になります。ゆくゆくは地域に密着したエコシステムを回し、他の地域にも展開できるような仕組みを作り上げていただくことを期待しています。 ──民間からこの仕事に携わることで感じられるやりがいや、今後につながるキャリア価値には、どのようなものがあると思われますか。それぞれのポジションについて教えてください。 民間副業先生に関しては、未来のエンジニアを育成する醍醐味が味わえるでしょう。先生の熱意はダイレクトに学生に伝わります。普段の実務では体験できないような心を揺さぶられる感動が得られるはずです。 また、教員と意見交換し、民間の組織運営やマネジメントなどの知見を共有していただくことで、高専の組織変革や教員の意識改革にも寄与できる可能性も大いにあります。高知県は少子高齢化が進んでおり、本校の教員は危機感を持っているので、状況をより良くするために変わることには、一切抵抗感はありません。これは他の高専と比べても随一ともいえる特徴ではないでしょうか。 地域コーディネーターにおいては、「学区」という立場から新しいセキュリティコミュニティの枠組みを作る第一人者になれるのが魅力です。地域セキュリティコミュニティは、これから全国各地でさらに広まっていくであろう取り組みなので、そこで得た経験は他の自治体・地域でも生かせるでしょう。 ──求める人物像について、経験とマインドの両面から教えていただけますでしょうか。 民間副業先生であれば、実際にサーバーセキュリティやセキュリティマネジメントの現場で環境の構築や運用に携わっている方。地域コーディネーターであれば、セキュリティに関する知識は必須ではありませんが、産官学連携でのプロジェクトなどに携わった経験がある方が望ましいですね。 ただ、そうした経験以上に大切なのは、自分の経験・知識を学生や地域の方々に伝えたいという純粋な思いがあることです。相手に伝わる話し方ができるかどうかも重要なので、マネジメント経験がある方はより向いているかもしれません。 ──最後に、この記事を読んでいる方にメッセージをお願いします。 セキュリティは世界共通で必要な技術であり、これからもどんどん伸びていく分野の一つです。実際にセキュリティを学びたいと考える学生が高知高専にはそろっています。また、今回の取り組みが成功すると、全国に横展開で広がっていく可能性があります。全国の高専のロールモデルとなり、あなたの経験を多くの学生に伝えていただければと思います。
確認事項
業務は主に高知工業高等専門学校の職員および関係者と実施していただき、採用された際の契約についても高知工業高等専門学校との契約となります。
募集職種
- 【副業・兼業】次世代のセキュリティ人材を育成するセキュリティ先生
セキュリティコンサルタントネットワークエンジニアインフラエンジニア
問わず
【募集背景】 当校は国立の高等専門学校51校の中で、情報セキュリティィの中核拠点校として質の高い最先端の情報セキュリティの授業を揃えていきたいと考えています。近年、増加しているAI・数理サイエンス、ロボット、IoTという分野に必ず必要になってくる知識が情報セキュリティです。この分野の即戦力人材の育成を疎かにすることはできません。そのため、授業には、学術的な側面と実務的な側面を両方バランスよく取り入れる必要があります。当校は、国立の高専で唯一セキュリティーをコース名に掲げる学校として、学術的な側面の授業は既存の教員で自信を持ってできていますが、教員である以上実務的な側面の経験や知見が不足しています。そこで、実際の社会で活躍されている民間のプロフェッショナル人材の方に、副業先生をお願いできないかと期待しています。 【業務内容】 ・カリキュラム設計 現職の教員とタッグを組み、担当いただく後期の授業のカリキュラム設計から関わっていただきます。 ご自身の経験や社会ニーズなどを総合し、より実践的にセキュリティリスク分析・評価・対応、セキュリティの改善方策の立案などが行えるような授業課題設定やケーススタディなどを盛り込んだ授業を一緒に作っていただきたく考えています。 ・授業の実施 11月から2月ころの授業のうち、3回から5回程度の登壇を見込んでいます(1回90分) 基本的にはオンライン授業としますが、必要に応じて対面での授業を盛り込んでいただくことも可能です 対象は情報セキュリティコース5年生(25名程度)で、「情報セキュリティマネージメント」という科目の一部を担っていただきます ・キャリア教育授業への登壇 上記5年生の授業とは別に、3年生に向けたキャリア教育の授業でも、実際の仕事内容などを紹介していただく機会があります 新しい職業となる情報セキュリティは、社会にロールモデルも少なく、先輩の活躍を聴ける機会を増やしたいと考えています 理論よりもケーススタディや実践に近いところを教えてくれる人をお待ちしています。 【担当部署】 国立高専機構 高知工業高等専門学校 ソーシャルデザイン工学科 情報セキュリティコース 【得られるキャリア価値】 情報セキュリティを専門に学びたいという感度の高い学生に対して、自身の経験や英智を教えることで、技術や経験の棚卸しと整理整頓ができると思います。それを持って、高専以外の企業内研修や他大学の教壇などに立つことなども広がります。また、今後も活躍の幅を広げていただきたいと考えており、多様な高専の教員とのつながりも得ることが可能です。 【受け入れ態勢】 高知高専の情報セキュリティコース及びK-SEC事業(※公募記事を参照)に関わる教員、事務員が、サポートいたします。また、今後、高専全体の取り組みになることを視野に入れ、本部である高専機構のメンバーも伴走させていただきます。
- 【副業・兼業】地域セキュリティにおける産学官連携を促進する地域コーディネーター
事業企画・事業統括新規事業企画・事業開発戦略コンサルタント
高知県
【募集背景】 国立工業高等専門学校(高専)は設立の際に、「地域に貢献し地域社会を牽引する人材育成」を担うことを期待されている高等教育機関です。これまでも社会や地域のニーズに合わせて、地元への技術者の輩出や地域の産業支援など、柔軟に地域と関わってきました。そして今、当校が地域から求められているのは、情報セキュリティに関する地域内コミュニティの中心となることだと考えています。コロナ禍によりデジタル化が急速に進むことで、情報セキュリティは、都市部の大企業だけでなく、地域の中小企業や一般の市民、学生に至るまで、全ての人に必要なものとなりました。そのため、日本全国で情報セキュリティ人材が不足し、地元高知県でも例外ではありません。そこで、情報セキュリティの専門人材が多く所属する当校が中心となり、地域に根ざした産学官連携を推進し地域の情報セキュリティを支援するコミュニティを作ることが必要となりました。 しかし、当校の教員だけでは、持続的に地域と連携するフレームワークづくりを行うのに経験が不足しております。地域において持続可能なコミュニティを作り、運用したことのある方のサポートが必要です。現在、経済産業省の事業でも、セキュリティの地域コミュニティを作ろうとしている取り組みが進んでいます。そういった事例を参照しながら、高知県・四国でのフレームワークづくりを担っていただける人を募集します。 【業務内容】 ・地域コミュニティづくりのための企画、フレームワークづくり ・地域のステークホルダーとの調整業務支援 当校の地域コーディネーターの名刺を用意しますので、当校の地域連携担当教員とともに訪問いただくなど、一部、現地での活躍もお願いします 打ち合わせ、企画会議などはオンラインを活用して行います ・地域コミュニティを活用したイベントの企画提案 【担当部署】 国立高等専門学校機構 高知工業高等専門学校 ソーシャルデザイン工学科 【得られるキャリア価値】 今後、日本中に展開することが期待される産学官連携の新たな形作りに立ち会っていただくことになります。ここでのご経験を、他地域、他分野での産学官連携に転用して仕組みづくりをしていただくことが可能です。情報セキュリティの業務経験・専門知識は問いません。(活動に必要な基礎程度は勉強いただければ大丈夫です) 【受入態勢】 当校の教員・職員は、変わることに抵抗のない人が多く、新たなことを取り入れることに積極的です。そのため、自分たちが持っていない知識や経験を持ってきてくださる地域コーディネーターの方が必要だと教えてくださるものには、モチベーション高く取り組みます。地域内に連携の強い教員が活動には伴走しますので、地域内でのネットワーク作りはお任せください。